「そもそも確率って何?」という問題意識があり読んでみました。
結論から言うととても面白かったです。勉強にもなりましたし、読み物としても面白いです。ギリースの「確率の哲学理論」よりもこちらの方がオススメですね*1 *2。
で、けっきょく確率解釈の大まかな分類を図示してみるとこんな感じになりますかね。
上記のそれぞれの解釈について大雑把に説明すると
- Belief-type probability →信念の度合いとしての確率
- Personal theory →個人が持つ信念の度合いとしての確率
- Inter-personal theory →集団が持つ信念の度合いとしての確率
- Logical theory →論理的な推論の確からしさの度合いとしての確率
- Frequency-type probability →頻度としての確率
- Frequency theory →ある事象が起こる割合の繰り返し試行における極限値としての確率
- Propensity theory →事物に内在する傾向の記述としての確率
という感じになるでしょうか。
この本を読んでびっくりしたことの一つは、かのケインズの処女作はケンブリッジ数学科時代に書いた「確率論」であったということでした。フィッシャー/ピアソンなどの同時代のケンブリッジ統計学者との直接的な絡みは殆どないらしいですが*3、ケンブリッジにおけるフィッシャー/ピアソン/ネイマンの流れの統計学の発展が、その後アメリカでの大恐慌後のニューディール政策の実施を下支えした*4ことを考えるとちょっと面白いですよね。
An Introduction to Probability and Inductive Logic
- 作者: Ian Hacking
- 出版社/メーカー: Cambridge University Press
- 発売日: 2001/07/02
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*1:まあ本書の方がより一般読者向けなので読みやすいのはあたりまえですが
*2:因みにギリースは「Frequency-type probability」を「客観確率」と呼んでいますが、「客観/主観」という響きは価値中立的ではないので私はあまり好きではありません。現実の問題を扱う上では「客観」確率概念の方がむしろ「フィクショナル」な場合が多いんじゃないかなー。
*3:後日追記:wikipediaのフィッシャーの項に"1909年、ケンブリッジ大学に進み、数学を学ぶとともにジョン・メイナード・ケインズやホレース・ダーウィン(チャールズ・ダーウィンの息子)とともに優生学研究会を組織した"との記述あり