Take a Risk:林岳彦の研究メモ

自らの研究に関連するエトセトラについてのメモ的ブログです。主にリスク学と統計学を扱っています。

蜂群崩壊症候群の記事への追記

昨日の記事への追記です。

(1)矢原先生の記事

矢原先生のブログでも、関連記事のアップデート&追記がされました。

補足 - Y日記

(2)永井孝志さんの記事

農環研の永井孝志さんの関連記事でミツバチの毒性試験に関しての情報提供がありました。LD50ってミツバチの体内濃度ではないのですね。

ミツバチへのリスク: Memories of the Past by Takashi NAGAI

もうひと加えておくとすると、
LD50は接触毒性試験でもって評価されるもので
これは農薬をミツバチに塗布して致死率を見る試験です。
(濃度は塗布した農薬量/ミツバチの体重になります)
農薬が含まれる花に曝露させて体内中濃度と
致死率を見る試験ではありません。
毒性の解釈にはこの辺も重要なところです。

これでは「LD50」と「花粉中農薬濃度」の比較といっても、ますますもって何と何を比較しているのか、非常に解釈が難しいところです。


あと以下の指摘は本質的。盲点でしたが言われてみればそもそも確かに家畜の話ですよね。

そもそも家畜は生物多様性の中に入るのでしょうかね?
口蹄疫生物多様性を脅かすハザード?

生物多様性」のBUZZワード化は避けたいところですよね*1

(3)個人的な感想というか背景に対する憶測

私はCCDの件についてはド素人だという自覚があるので敢えて書きませんでしたが、背景についての憶測を書きます。あくまで憶測です。

「CCDの農薬原因説」に多くのまともな専門家が比較的懐疑的*2な理由は、おそらく農薬への曝露の問題は古くから常にあり平均的には昔のほうがかなりヒドかったと思われるので*3、その農薬の影響がいまさらに「突然の全米同時多発的な失踪」という現象と結びつくと考えることには(少なくとも現時点では)明らかな短絡がある*4と考えられるからではないかと推測されます。

Mullin et al. (2010)にみられる「CCDと農薬を結びつけること」に対する非常に禁欲的な筆致はおそらくそういう背景に起因しているのだと憶測しています*5

*1:ミツバチだけに。とか書くと誰かに怒られそう

*2:ここはソースなしなので個人的な印象です。もしソースがある人は教えてください。

*3:ここもソースなしで書いているので憶測です

*4:つまり、曝露側のプロファイルと症候側のプロファイルが一致しない

*5:しかし、自分は専門家ではないので本当のところは分かりません