Take a Risk:林岳彦の研究メモ

自らの研究に関連するエトセトラについてのメモ的ブログです。主にリスク学と統計学を扱っています。

フィッシャーの「統計的方法と科学的推論」が面白すぎる(その8)

いささか間が空いてしまいましたが、本書のメモも再開します。

第3章「いろいろな形の定量的推論」の第2節「より一般的な仮説」より。強調は引用者。

科学的仮説では、一つあるいは二つ以上のパラメータ、つまり調整可能な"定数"が含まれており、それがどのような値をとっても、あるいはあらかじめ定めた範囲のいかなる値をとっても、仮説とは矛盾しないのである。このような仮説にたいして有意性検定を2通りの方法で適用することができる。まず第1に、仮説を全体として棄却するような有意性検定をつくることができる。つまり観測記録の任意の適当な特性が、パラメータの値が何であろうと、きわめて稀な偶然が起きたときにだけ現れることが示されるならば仮説を棄却する。第2に、このような特性が見られなかったり、またそのような特性が見られてもそれが無理なことや不自然なことであったならば、一般的な仮説は一時的に採択される。そうしてパラメータの値を推定することが問題となる。必ずしもいつでも可能ではないが、あとでみるような場合には、推論によってパラメータがある限界内に入っているという内容の命題にたいして、計算可能な数学的確率を与えることができる。

ここは有意性検定の適用の仕方として、「モデル自体の妥当性」と「パラメータの値の推定」の2段階がありうることを議論しているようです。本ブログの過去の記事と類似の論点かと思われます。

最後の1文は、次節の「推測度による論法」のことを指しているものと思われます。ちなみに、「推論によってパラメータがある限界内に入っているという内容の命題」についてのネイマンの立場は"inductive behavior"ということになるのでしょう(この過去記事参照)。

次回から、いよいよ「推測度による論法」(いわゆるフィデューシャル推測)の節に入っていきます。