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Take a Risk:林岳彦の研究メモ

自らの研究に関連するエトセトラについてのメモ的ブログです。主にリスク学と統計学を扱っています。

(私にとって)STSはなぜ必要か

あーまだ全然論文書けてないっすけど、今日はいきおいで書いてみたいと思います。


ええとまず一般論として、「〇〇とは何か?」という問いってちょっと難しいですよね。例えば、犬のことは良く知っていても、「犬とは何か」って言われると意外とどう答えていいかよく分からなくなるような気もします。

でも、「(私にとって)〇〇はなぜ必要か」という問いならば、答えられそうな気もします。

なので、今回は「(私にとって)STSはなぜ必要か」について書いてみたいと思います。


で、今そういうことを書こうとしてる私は全然STSプロパーでも何でもないのですが、私の専門である「リスク評価」という仕事はいわゆるトランスサイエンス的な現場でリアルに働くものなので、わりとSTS的問題意識に否が応にも向き合わざるを得なかったりするわけです。

そんな中で私はわりと普通に「STS的観点って必要だよなぁ」と感じているのですが、まあそのあたりの「外野的関連分野から見たSTS観およびニーズ」についてつらつらと書いていけたらと思います。

私のSTS観:科学の「正当性」と「正統性」を問う

ええと、私がSTSについてどういうイメージを持っているかを一言でいうと:

社会の側から見た科学の「正当性」と「正統性」を問うのがSTS

というかんじになるのかなあと思います。

ここで「正当性」というのは、「内容的に正しいか/妥当かどうか」という意味です(*正当性/正統性の用語についてはぜひこちらの記事の説明もご参照ください)。


で、もしかすると『「科学」であるならば「内容的に妥当である」』とうっかり思ってしまいがち(かもしれない)ですが、ここでポイントとなるのは「社会の側から見た」という部分になります。

ここでの焦点は、『科学者集団の内部ルールとしての「内容的な妥当さ」』と『社会の側から見た「内容的な妥当さ」』における「妥当さの基準」が現実問題としてしばしば食い違っているところにあります。


例えば、過去の記事でも書きましたが、『科学者集団の内部ルールとしての「有意水準5%に満たない結果(の論文)はrejectする」』という「妥当さの基準」が、果たして放射線防護についての基準値を決める際の「妥当さの基準」と合致するかというと、それらは本来的に全く関係ないわけで、そこには明らかに齟齬が生じるわけです。

また例えば、「ES細胞を科学研究のために使うことの妥当性/正当性」のような問題は、齟齬以前にそもそも科学的に答えることができない問題なので、「社会の側から見た」妥当性を考えることが一義的に必要となってきます。


で、一般論としては、「ある特定分野内における正当性」と「一般社会の側から見た正当性」の齟齬という問題自体は、科学に限らないものだと思います。しかし、やはり現代社会においては科学技術の影響は良くも悪くも非常に大きいので、「社会の側から見た科学の正当性」というテーマを本業として考えてくれるSTSというものが必要となってくるわけです。

民主主義における専門家集団:科学の「正統性」を問う

はい。では「科学の正統性を問う」のほうを見ていきましょう。


ここで「正統性」というのは、「手続き的な根拠という観点からの正しさ/妥当性」という意味です。ほいで、ここで「科学の正統性を問う」というのは、基本的に「別に選挙によって主権者(国民)に選任されたわけでもない科学者風情がなんで国/行政の意思決定において大きな権力をもってるんだよ!」という形のツッコミになります。


で、この問題意識というのはわりと時代の流れみたいなものを反映していて、たぶん高度成長期は「科学者風情がなんで国/行政の意思決定においてそんな権力もってるんだよ」と問われたら「だって科学って正しいじゃん!」で済んだのだと思います(雑)。

しかし、近代化がさらに進んでくると、「科学的正しさ」が「正統性」の絶対的根拠になるという前提自体がゆらぎ、「科学的正しさ」はいろんな種類の「正しさ」のうちのone of themに過ぎない、つまり「国/行政の意思決定における正統性の根拠自体が選択可能なものとして認識される」ようになってきたわけです(たぶん)。

そして、実際問題としても科学(技術)政策に関する意思決定の多くが少数の専門家集団により決定されているのは色々と問題が多いので、流れとしては「市民の関与」というものが促進されるべきだ、というかんじになってきているわけです。


この「専門家集団の知を民主的意思決定の中にどう位置づけるか」というのは現代の民主主義における非常に重要かつ困難な問題であるわけですが、その重要な問題を本業として考えてくれるSTSというものはやっぱり結局必要だよなあ、と思います*1


はい。

P. S.


だいたい合ってますか?>r_shinehaさま




.

*1:それがどのようなdiciplineを持った者によって担われるべきか、はともかく