Take a Risk:林岳彦の研究メモ

自らの研究に関連するエトセトラについてのメモ的ブログです。主にリスク学と統計学を扱っています。

「古典的統計学の主観性」と「リスク分析における現実としての主観主義」のメモ

「入門リスク分析」からの統計解析における客観性/主観性についての言及(p199)についてメモしておきます。

多くの科学者、特に伝統的な教育を受けてきた多くの統計学者は、科学は客観的であるべきであると考えており、主観主義に依拠するいかなる方法論も認めようとしない。もちろん、これに対しては多くの反駁がある。そもそも、経験的なモデルは主観的なのである。古典的統計学は、ある仮定(例えば、正規分布に従う誤差や母分布)を置いているという点で限定的であり、科学者はそうした仮定が充分に満たされているかどうかを判断しなければならない。統計分析では、多くの場合、最終的には、(極めて主観的な)一定の有意水準(p値)を決めて、設定した仮説が支持されるか棄却されるかが問われる。Berger and Sellke (1987), Casella and Berger (1987), Edwards et al. (1963)では、驚くべきことに、データという事後的な情報も、多くの場合、古典的な統計量p値に比べて説得力が弱いということが示されている*1

リスク分析者にとって主観主義は現実なのである。構築するモデルは実体世界の近似にすぎない。リスク分析者が構築したモデルの構造や許容しうる精度についての意思決定は極めて主観的である。加えて、リスク分析者はモデルの入力値に主観的推定値を用いなければならないことが極めて多く、それを根拠づけるデータすら何もないことも少なくない。

入門リスク分析―基礎から実践

入門リスク分析―基礎から実践

*1:引用者注:ここちょっと面白そうなんだけれど意味がよく分からない。翻訳の問題かな?