関係各位への注意喚起のためのメモです。
EU(2003)のTGDの105ページの
PNEC=5%SSD(50%c.i.)/AF (69)
というところの"50%c.i."というのは実質的には「(underestimateだけを興味の対象とする)片側検定的な状況の下での50%信頼区間の下限」を指しているようです。なので50%c.i.と書かれてはいますが、実質上はHC5のmedianを意味しているようです*1。
このEUのTGDに限らず、EUのリスク評価関連文書においてはしばしばHC5の"50% confidence level"というような表現が出てきますが、これらも実質上はHC5のmedianを意味しているようです *2。
おそらくこの残念な混乱の原因はT. Aldenbergの用語法にあると思われます。PosthumaのSSD本のAldenbergの章(p104)には
The latter contains extrapolation constants for lower, median, and upper estimates of the HCp (95, 50, and 5% confidence level respectively, as one-sided underestimates)
という表現があります。ここで、この"as one-sided underestimates"という但し書きが本来非常に重要なところで、この但し書きの下で、Aldenbergの云う"50% confidence level"は"片側50%信頼区間の下限値としてのmedian"を意味することになるわけです。
TGDなどのEUの文書にみられる記述では、この"as one-sided underestimates"という前提の記述が抜け落ちているために、しばしば我々にとって意味が不明瞭なところが見られます。"as one-sided underestimates"という但し書きをつければ、EUのTGDの記述もより明確に意味が通ると思います*3 *4。
Species Sensitivity Distributions in Ecotoxicology (Environmental and Ecological Risk Assessment)
- 作者: Leo Posthuma,Glenn W. Suter II,Theo P. Traas
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