たまには進化ネタで。といってもマンガの話ですが。
一般に多くの種では「オスがメスよりも派手」なことが知られています。例えばクジャクなどを思い浮かべてもらえば分かりますが、あの豪奢な羽根をもっているのはオスの方で、メスの方は案外地味だったりします。
なぜ「オスがメスよりも派手」かというと、一般に、集団内で繁殖に参加している潜在的なオスの数がメスの数より多いためです。このような状況を専門的には「実効性比がオスに偏っている」と言い、メスを惹きつけるためにオスが派手になります。
一般とは逆に「実効性比がメスに偏っている」種が稀にあります*1。それらの種では、やはり一般とは逆に「メスがオスよりも派手」なことが知られており、配偶相手を巡る競争により「派手さ」が進化することが伺われます。
このような進化学的観点からみると「オスの派手さ」というのは、「オスにとっての本質論的なnatureの顕われ」というよりも、実効性比によって左右される「オス的なジェンダーの顕われ」であると言うことができます。
さて、そのような視点から読むと、よしながふみの「大奥」には本当にニヤリとさせられます。この物語の設定は「江戸時代に男のみがかかる疫病が大流行する事により実効性比が大幅にメスに偏り、その結果いわゆるsex role reversal/ジェンダーの転換が生じて男ばかりの大奥ができる」というものです。
本当に進化学視点で読んでもジェンダー論視点で読んでも抜群におもしろいので*2、ぜひ長谷川眞理子先生に書評を書いていただきたいものだといつも思ってしまいます。
- 作者: よしながふみ
- 出版社/メーカー: 白泉社
- 発売日: 2005/09/29
- メディア: コミック
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- 作者: 長谷川眞理子
- 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
- 発売日: 2005/09
- メディア: 単行本
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