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Take a Risk:林岳彦の研究メモ

自らの研究に関連するエトセトラについてのメモ的ブログです。主にリスク学と統計学を扱っています。

因果関係がないのに相関関係があらわれる4つのケースをまとめてみたよ(質問テンプレート付き)

統計 リスク

どもっす。林岳彦です。ファミコンソフトの中で一番好きなのは『ソロモンの鍵』です*1


さて。

今回は、因果関係と相関関係について書いていきたいと思います。「因果関係と相関関係は違う」というのはみなさまご存知かと思われますが、そこをまともに論じていくとけっこう入り組んだ議論となります。

「そもそも因果とは」とか「因果は不可知なのか」のような点について論じるとヒュームから分析哲学(様相論理)へと語る流れ(ここのスライド前半参照)になりますし、統計学的に因果をフォーマルに扱おうとするとRubinの潜在反応モデルやPearlのdo演算子やバックドア基準(ここのスライド後半参照)の説明が必要になってきます。


その辺りのガッツリした説明も徐々に書いていきたいとは考えておりますが(予告)、まあ、その辺りをいちどきに説明しようというのは正直なかなか大変です。

なので今回は、あまり細かくて遭難しそうな話には立ち入らずに、「因果関係がないのに相関関係があらわれる4つのケース」についてあくまでもざっくりとした説明を試みてみようと思います。


(*最初に断っておきますが、以下、長いです)

まずは(とりあえずの)因果関係の定義から

まずは、(とりあえずの)「因果関係」の定義をしておきたいと思います。

因果の定義には色々なスタイルがありうるのですが、今回の記事内では:

「要因Aを変化させた(介入した)とき、要因Zも変化する」ときに、「要因A→要因Zの因果関係がある」と呼ぶ

ことにしたいと思います。

このような「介入に基づく因果の定義」は非常に日常的/普遍的なものです。たとえば、初めて訪れた大きな教室において「壁にあるスイッチと照明電灯の因果関係」を把握したい場合を想像してみましょう。

このとき、私たちはおそらくスイッチを適当に押し、「どのスイッチを変化させると、どの電灯の状態が変化するか」の対応をみて、「各スイッチと各電灯」についての「因果」を了解します。このような「介入による変化にもとづく因果関係の判断」は私たちが普段の生活の中で日常的に行なっていることです。


因果関係について本質論的に考えていくと遭難しがちなので、とりあえず今回はこのようなカジュアルな形で「因果関係」という概念を捉えておきます。

因果関係なしの相関関係:(1)偶然によるケース

では、因果関係がないのに相関関係があらわれるケースを見て行きましょう。

まず第一に挙げられるのは、単なる偶然によるケースでしょう*2

独立した2つの現象に関連性が現れることは、単なる偶然によっても生じえます。もっとも単純には、「二つのサイコロを転がしたら同じ目がでた」なんてのがそれにあたります。ここではもちろん「同じ目がでた」と言っても、2つのサイコロの目の間に「因果関係」はありません。つまり、「サイコロAの目を変化させると、サイコロBが同じ目に変化する」という関係があるわけではありません。


もう少し複雑な例として、25人の幼稚園児に「うまい棒」と「チロルチョコ」を、10枚のコインを投げたときのオモテの数の個数だけ与えるような場合を考えてみましょう*3

まず、25人の園児に10枚のコインを投げたときのオモテの数の個数だけ「うまい棒」を与えます。つまり、1人目が10枚のコインを投げたときのオモテの数が「5」なら1人目には「5個のうまい棒」を与え、2人目が10枚投げたときのオモテの数が「3」なら2人目には「3個のうまい棒」を与え…という調子で、25人に対してそれぞれオモテが出た数だけ「うまい棒」を与えていきます。

その後、最初に与えたうまい棒の数とは全く関係なく、25人それぞれに新たにコインを10枚投げたときのオモテの数の個数だけ「チロルチョコ」を同様に与えていきます。このようにして、25人全員に「うまい棒」と「チロルチョコ」の配布を終えたとします。

この場合、もちろん、各園児が持つ「うまい棒」と「チロルチョコ」の個数の間に因果関係はありません。つまり、「ある園児が持つうまい棒の個数を変化させると、その園児が持つチロルチョコの個数が変化する」という関係はありません。

さて。

では、このとき、各園児が持つ「うまい棒」と「チロルチョコ」の個数に、どのくらいの頻度で「有意な相関」が検出されると思いますか? Rによるシミュレーションをやってみます(ソースコードは Umaibou-Tiroru.R 直 ):


この図は、25人の園児のそれぞれに「うまい棒」と「チロルチョコ」を、それぞれ10枚のコインを投げたときのオモテの数の個数だけ与えるシミュレーションを100回くり返したときの結果です。

横軸はそれぞれのシミュレーション(1〜100回目)を、縦軸はそれぞれのシミュレーションにおいて得られた「各園児が持つうまい棒とチロルチョコの個数」の相関係数のp値を示しています。赤線はp=0.05となるところを示しており、赤線を下回ると有意差(有意水準 p=0.05)があるということになります。

上の図からは、100回中5回くらい、有意水準を下回る場合があり、相関係数に「有意差」が現れていることが分かります。つまり、100回に5回くらいは、各園児が持つ「うまい棒」と「チロルチョコ」の個数に偶然による「有意な相関」が現れるわけです*4

ちなみに、上の図は園児の数が25人でしたが、園児の数を25,000人に変えても同じような結果が得られます:


これは「統計的有意差」の意味を正しく理解している人々には極めてあたりまえのことなので、これらの図を見て「えっ!?」と思ってしまった方々は、この機会に"有意差"というものを復習しておきましょう。(例えばここ


また、このような件に関する特に注意が必要なケースとしては、同一のサンプルに対して多数の仮説検定を適応(=多重比較)しているときが挙げられます。このような場合には、上記のような「偶然によって生じる相関関係」を有意なものとして特に拾いやすくなることが知られています。この多重比較の問題については以前に書きましたので、ぜひ以下をご参照ください:

無から有(意差)を生む:多重比較でウソをつく方法 - Take a Risk:林岳彦の研究メモ


調査観察データにおける「相関関係」が偶然によるものかどうかを知りたい場合には*5、可能な場合には再度の調査を行ったり、あるいは独立に行われた類似の研究間で一貫した結果が得られているかを調べると良いでしょう*6。多数の研究で一貫した結果が出ている場合には、その「相関関係」が偶然によるものとは考えられません。

因果関係なしの相関関係:(2)因果の流れが「逆」のケース

次は、因果の流れが「逆」のケースについて見ていきたいと思います。

例として、「事故多発注意の看板」について考えていきましょう。「事故多発注意」の看板がある幾つかの場所と、そのような看板がない幾つかの場所で、事故の発生率を調べてみたとします。そのような調査の結果、おそらく「事故多発注意」の看板のある場所のほうが、ない場所よりも、事故の発生率が高いかもしれません。図や数式で表すと:


P(事故の発生|看板あり) > P(事故の発生|看板なし)

と書けるような状況です。

このような場合に、「看板あり→事故発生率高い」という因果関係はあると考えられるでしょうか?


これは、普通に考えると、因果の流れが「逆」ですよね。このような場合には、おそらく「事故の発生率が高い→看板の設置」というのが順当な因果の順序であり、その結果として、「事故の発生率」と「看板の設置状況」に相関関係が生み出されているものと考えられます。

このような場合には、「事故の発生率」と「看板の設置状況」の相関関係は、「看板あり→事故発生率上昇」の因果関係の存在を意味しません。また、もちろん「看板設置への介入(看板を外す)→事故の発生率の減少」という変化も期待できません。


看板の例はあまりにも安直すぎるかもしれないので、もうちょっとリアルに難しい例も考えてみましょう。


サンゴとその捕食者の例を採り上げてみます(この話はこのtogetterの内容を基にしていますが、本記事ではあくまでも説明のための仮想例としてディテールは無視して取り扱います)。

サンゴの保全のための調査から、サンゴの生存率とサンゴの捕食者Oの個体数に以下の相関関係が示されているとしましょう。また、捕食者Oは実際にサンゴを捕食していることがフィールドでの観察から分かっているとします。

このとき、「捕食者Oの増加→サンゴの生存率の減少」という因果関係を想起するのは自然なことかもしれません。

もしこのような因果関係が存在するならば、「捕食者O」を減少させることにより「サンゴの生存率」を増加させることができそうです。


はてさてしかしながら:


より詳細な調査から、「捕食者Oは死にかけのサンゴしか食べない」ことが分かってきたとします。このとき、捕食者Oは実は生態系の中でスカベンジャー的役割を果たしていたということになります。

こうなると、「サンゴの生存率が低下→スカベンジャーである捕食者Oが増加」という逆の因果が真である可能性も出てきます。もしこの形の因果が真ならば、「捕食者Oを減少させることによりサンゴの生存率を増加させる」という保全施策は全く効果を及ぼさないことになります。(むしろ、スカベンジャーを排除することによりサンゴの健全な新陳代謝が妨げられる可能性さえあるかもしれません)

そして、このどちらの「因果の向き」がより真に近いのかは、基本的には現場での観察 and/or 介入によってしか明らかにすることはできません*7


はい。

このサンゴと捕食者の例は、「因果の向き」を正しく認識し、適切な統計的因果推論を行うためには、対象とする現象についての適切な背景知識を持っていることが本質的に重要であることを示しています。(因果の森に一歩足を踏み入れたからには、stepwise AICみたいなオートメーションな形で話を進めることはできないのです!)

対象とする現象に対する理解が(その現象の複雑さに比して)乏しい場合には、「因果の向き」を正しく理解することも案外と難しいものです。油断して自分の思い込み/予断で進みすぎないように、注意しましょう。

あと、以下のような、複数の要因を経た「逆向きの因果」も非常に気づきにくくやっかいなので、注意が必要です。


因果関係なしの相関関係:(3)因果の上流側に共通の要因が存在するケース

では次は、「因果の上流側に共通の要因が存在するケース」について見ていきたいと思います。

これはいわゆる「交絡」と表現されるものに対応するケースです*8。因果グラフで表すとその構造がわかりやすいので、因果グラフを用いて説明していきたいと思います。

「交絡」の状況を因果グラフで書くと以下のようになります:


コトバで書くと「説明変数Aの"上流側"に、説明変数Aと結果変数Zの両者に影響をもたらす要因がある」 というかんじですかね。そのような要因のことを、「交絡要因」とか「交絡因子」と呼びます。上の図の場合、要因B,Cが交絡要因となります。

(ここで要因Cを「交絡要因」と呼ぶかどうかは微妙ですが、要因Cで調整すれば交絡は消える状況にあるのは確かなので一応「交絡要因」として呼んでおきます。ここで要因Cも含めるためのニュアンスとして単に"上流"ではなく"上流"という表現を使っています)


では、具体的な例で考えてみましょう。河川中の「亜鉛濃度」と「底生生物の種数」の仮想例について見ていきます(この仮想例の生成と解析に用いたRスクリプトは zinc-BOD.R 直 )。


河川の底生生物の保全のために「底生生物の種数」と河川中の環境汚染物質について調査を行う場合を考えていきます。まず、手始めに重金属濃度データについて調査したところ、河川中の「底生生物の種数」と「亜鉛濃度」に以下のような関係が見られました:


このとき、「亜鉛は底生生物に対して毒性がある」という背景知識を考慮に入れると、「亜鉛濃度の増加→底生生物の種数の減少」の因果関係を想起するのは自然なことかもしれません。ここで「底生生物の種数」に対して「亜鉛濃度」を説明変数とした単回帰をしてみると、その回帰係数は「-1.0」で、傾きの有意差は「p<2.6 x (10の-10乗)」となっています。


はてさてしかしながら:


さらに調査を進めていくと、河川の有機汚濁(BOD)に関しても同様の関係が見られることがわかりました:


はて。これを見る限りは、「BODの増加→底生生物の種数の減少」という因果関係もありえそうです。「底生生物の種数」に対して「BOD」を説明変数とした単回帰を行うと、その回帰係数は「-1.9」で、傾きの有意差は「p < 2x(10の-16乗)」となっています。


はてはて。どちらが「真」の因果関係なのでしょうか?


こういう場合の定石として、結果変数を「底生生物の種数」、説明変数を「亜鉛濃度」と「BOD」とした重回帰分析を行なってみましょう。結果として得られたのは:

> res.num_BOD_zinc <- lm(num_species ~ BOD + zinc)
> summary(res.num_BOD_zinc)
...略
Coefficients:
            Estimate Std. Error t value Pr(>|t|)    
(Intercept) 18.32240    2.75233   6.657 1.68e-09 ***
BOD         -2.02024    0.16300 -12.394  < 2e-16 ***
zinc         0.08852    0.12811   0.691    0.491    

という結果でした。この結果を読むと、「亜鉛濃度」「BOD」の2つの説明変数による重回帰を用いたところ、「亜鉛濃度」の影響が消えてしまっていることが分かります(対応する偏回帰係数が0.088, p値は0.49)。この結果から、「亜鉛濃度」と「底生生物の種数」の相関関係は交絡によるものであり、「因果関係がないのに相関関係が現れている」ケースであることが分かります。

一方、「BOD」の影響は殆ど変わらず(対応する偏回帰係数が-2.0, p値は < 2x(10の-16乗))、「BODの増加→底生生物の種数の低下」の因果関係の方は真であると推測できることになります。

上記のような場合には、因果グラフは以下のような構造であると推測できます:


このとき結果変数として「底生生物の種数」を、説明変数として「亜鉛濃度」をとった場合には、「BOD」が交絡要因となっているのが分かります。このような場合には、「BOD」の値で重回帰において説明変数として追加する等による調整を行わないと「亜鉛濃度→底生生物の種数」の因果効果を適切に推測することはできません。

(逆に、上記の因果グラフは、結果変数として「底生生物の種数」を、説明変数として「BOD」をとった場合には、「亜鉛濃度」は交絡要因ではないことを示しています)


一般に、上記の例のように「説明変数Aの"上流側"に、説明変数Aと結果変数Zの両者に影響をもたらす要因」がある場合には、簡単に「因果関係なしの相関関係」のグラフを作ることができます。例えば、説明変数Aと結果変数Zの両者が「年代につれて増加」するような傾向を持つときには、両者の変数の間に因果関係がなくとも、相関関係は簡単に現れます。例えば、このあたりの有機食品と自閉症の例テレビの台数と死亡率の例などはその典型例といえるでしょう。


このような「交絡」の影響を除去するためにはどうしたら良いでしょうか?

定石としては、交絡の原因となる要因(=「説明変数Aの"上流側"に、説明変数Aと結果変数Zの両者に影響をもたらす要因」)に基づきデータを層別化して解析を行うか、重回帰においてその交絡要因を説明変数に追加した解析を行うことになります。また、興味のある説明変数以外をまとめてエイヤっと交絡を調整する方法として傾向スコア法なんてのもあります。

ある要因が交絡要因かどうかを判断したい場合には、(厳密なものでなくてもよいので)因果グラフを描いて、その要因が「説明変数Aと結果変数Zの両者に影響をもたらす要因」 かどうか検討してみましょう。


(重回帰における変数選択の際に、「関連のありそうな変数はとりあえず入れとけ」みたいなアドバイスもあるようですが*9、変数を追加することにより逆にバイアスが生じたり*10因果効果の過小推定を引き起こす*11可能性もあり、また余計な変数を入れると推定精度が低下しがちなので注意が必要です。交絡を調整するためにどの説明変数を選択するべきかを判別するformalな基準としてバックドア基準というものがありますので、それについてもいつか書きたいと思います)


また、いわゆる「シンプソンのパラドックス」というのもこのタイプの交絡の一種です。以下の筒井淳也さんの素晴らしい記事を適宜ご参照いただければと思います:
シンプソンのパラドックスの図解 - 社会学者の研究メモ

シンプソンのパラドックスにおいての「どの変数において層別化(重回帰の説明変数として追加)するべきか」という決定は、確率論的考察からは議論することすらできない問題ですが*12、因果グラフさえ描くことができれば、バックドア基準に基づきどの変数が調整すべき変数(=交絡をもたらす変数)なのかを明確に判別することができます。


*交絡の問題に関しては、以下の記事でもまとめて書いておりますので適宜ご参照ください:
因果グラフからみる交絡問題:「遺伝統計学における因果問題の特殊性」について考えてみた - Take a Risk:林岳彦の研究メモ


(4)因果関係なしの相関関係:因果の合流点において選抜/層別/調整されてしまっているケース

では最後に、「因果の合流点において選抜/層別/調整されてしまっているケース」について説明していきたいと思います。

このケースは、いわゆる「選択バイアス」と呼ばれることが多いものです*13。因果グラフ系の用語では、「合流点バイアス(collider bias)」と呼ばれます。

因果グラフで見てみましょう:


因果グラフがこのような形のとき、要因Bが「合流点(collider)」と呼ばれるものになります。このような合流点で選抜/層別/調整が起きていると、「説明変数A→結果変数Z」の因果関係がない場合でも、両者のあいだに相関が生まれることがあります。

たぶん合流点バイアスは具体的な例を通して理解したほうがてっとり早いと思いますので、芸術系大学の入学試験の仮想例を考えてみましょう。


ある芸術系大学で入学試験があり、その内訳は「実技試験(500点満点)」と「学力試験(500点満点)」の二つの科目からなるとします。仮想例のための仮定として、実技試験と学力試験の間には本来的に相関関係も因果関係もないものとします。プロットをしてみると、こんなかんじの状態ですね(用いたRスクリプトは exam.R 直 ):


さて。

ここで、合格基準が「二つの科目の総得点が700点以上」だとします。このとき、諸事情によりデータ解析者には「合格した生徒のデータしか渡されていない」状況を考えてみます。このような状況で「渡されたデータ」からグラフを描き、相関係数を求めてみると:


という関係が現れました。ここでは、実技試験と学力試験の間には、因果関係がないにもかかわらず有意な相関が生じています。これは、データが「二つの科目の総得点が700点以上」という条件であらかじめ選別されていることに起因するバイアスです。図で説明すると:


この上記の青色の線が「二つの科目の総得点が700点以上」を満たすラインになっており、その部分の合格者だけのデータが選抜されていることにより相関が生じていることが分かるかと思います。こういうのがいわゆる「選択バイアス」というやつです。

上記の例のケースを因果グラフで書くと:


のような形になり、「合格の可否(試験の総合点)」が合流点となります。このような合流点の値に基づく選別があらかじめ行われていると、そもそも因果関係のない「実技試験の点数」と「学力試験の点数」の間に相関関係が生じてしまうのです。

(ここで一つ関連して注意しておきたいのは、たとえデータを「ランダムにサンプリングする」といっても、サンプリングの対象となる集団において既にバイアスが形成されている場合には、その"ランダムサンプリング"によってはそのバイアスを除くことはできません。例えば、上記の例の「合格した生徒のグループ」からランダムサンプリングにより50人選んだところで、その合流点バイアス自体が消えることはありません)


上記の例では、得られているデータの形成過程において「合流点での値に基づくデータの選択」が起きていましたが、合流点バイアスは、統計解析の時点における「合流点での値に基づく層別化」や「重回帰の変数として合流点にある要因を追加する」ことによっても同様に生成してしまいます。とっても気をつけましょう。

合流点バイアスを避けるためには、(厳密なものでなくてもよいので)因果グラフを描いてみて、上記のような「因果の合流点」において選抜/層別/調整が行われていないかチェックしてみると良いでしょう。

おまけ:建設的な質問をしよう!:統計解析者への「質問テンプレート」

はい。ここからは「おまけ」です。

上記の4つのケースを踏まえて、因果関係と相関関係に関して統計解析者(プロの研究者を想定)へ建設的な質問をするための「質問テンプレート」を幾つか考えてみたので解説してみます。


(A) 「説明変数Aと結果変数Z、および関連する主要なその他の説明変数(共変量)に関して、あなたが想定している因果グラフを描いてみてください(厳密なものでなくとも構いません)」

これは、上記ケースの2[逆]・3[交絡]・4[合流点]が当てはまっているかどうかをチェックするためのもっとも包括的な質問になります。ここで大事なのは、とりあえずの議論のためには必ずしも厳密な因果グラフを描く必要はなく、変数間の関係がおおざっぱに(上流か/下流か/独立か)議論できれば、多くの場合、間に合うということです。

相手が因果グラフを描いてくれた場合には、上記2・3・4のケースが当てはまりそうか吟味し、また、その因果グラフの理論的/メカニズム的妥当性について議論を進めることにより、建設的なやりとりが期待できます。(ひょっとすると、新たなリサーチクエスチョンが見つかる、なんてこともあるかもしれません)


(B) 「説明変数Aと結果変数Zについて、説明変数Aにおいて異なるサンプル群について、説明変数A以外の要因については同質であると言えますか?その論拠は?」

これも、上記の2[逆]・3[交絡]・4[合流点]のケースに対応する質問となります。この質問をより具体的に発展させると「質問(A)」の形になる、というかんじですかね。


(C) 「説明変数Aと結果変数Zの両者に影響を与えている、共通の原因が存在する可能性については考慮しましたか?」

これは上記3[交絡]のケースに絞って質問する場合になります。要するに「交絡要因についてちゃんと考慮していますか?」という質問です。具体的に頭に浮かんでいる「交絡要因」があるのならば、より具体的に「◯◯が交絡要因となっているのではないでしょうか?」と質問してみましょう。


(D) 「サンプリングもとの集団において既にバイアスがかかっている可能性はありませんか?」

これは上記4[合流点]のケースについて、「合流点バイアス(選択バイアス)があるのではないでしょうか?」という意味ですね。


(E) 「説明変数Aと結果変数Zについて、独立に行われた同様の研究において結果は一貫していますか?」

これは上記1の「偶然によるケース」に対する質問です。


(F) 「あなたの研究デザインは潜在的に多重比較になっていませんか?」

これも上記1の「偶然によるケース」に対する質問です。


あなたが、もし質問される側(統計解析者の側)ならば、質問者から蜂の巣にされないように、これらの点についてはちゃんと研究計画の段階からあらかじめ自問自答しておきましょうね(ニッコリ)。

まとめ:全ては地に足のついた丁寧な考察のために

まとめます。

今回説明してきた「因果関係がないのに相関関係があらわれるケース」は、以下の4つになります:

  • (1) 偶然によるケース
  • (2) 因果の流れが「逆」のケース
  • (3) 因果の上流側に共通の要因があるケース
  • (4) 因果の合流点において選抜/層別/調整されてしまっているケース

もしかしたら、上記の4つの他にも(測定や実験デザインの不備等により)「因果なしの相関」が生じるケースもあるのかもしれませんが、それらも結局は上記1-4の形(やその組み合わせで)表すことができるかと思います*14


で、ここで逆から言うと、われわれがある特定のデータから「相関関係が因果関係を意味するのか」を判断する際には、実際には「上記の4つのケースを除外できるかどうか」を判断しているとも言えるわけです。つまり、様々な角度からの検討により、上記4つのケースを高い確度で除外できると判断できるような場合には、「因果関係があって、相関関係が生じている」と推論できる、ということになります。


はい。

で、

まあ。なんといいますか。詰まるところをいえば(ヒューム的な意味で)我々は因果関係を知ることができない、というのは真だとは思うのです。完璧な文章や完璧な絶望が存在しないように、完璧な因果推論などといったものは存在しないのです。

ですが、でもそこで「因果なんてけっきょく分かんないんだから統計データから因果の考察するのなんて無意味っつうか無粋だよね〜」とか「因果なんてけっきょく分かんないんだからなし崩し的に因果があるって解釈しちゃってOKですよね〜」みたいな雑なかんじになるのではなく、そのつどそのつど「データ」と「理論/メカニズム」と「現場知」を照らし合わせながら「因果の有無と程度」について地に足をつけて丁寧に考察していくのが大事かな、って思う今日このごろであります。


ほんで


今回の記事がもしそのような「地に足のついた丁寧な考察」の一助となれば本当に嬉しいです。


#次回は、今回の記事とは逆の「因果関係があるのに相関関係があらわれないケース」についてまとめたいと思います。
あといくら何でも記事が長すぎですよね。本当にすみません。。。 > 読者さまがた
#尚、今回の記事は以下のtogetterに触発されて書かれたものです。まとめ人および登場人物の方々に感謝&リスペクト申し上げます。
相関関係と因果関係をごっちゃにしないために - Togetterまとめ

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私が寄稿させていただいた文芸誌が中野のタコシェで買えるようになったようです→ http://t.co/FzHMI9siWJ

*1:本当に名作だと思う

*2:"単なる偶然"とは何か、と問い詰められるとちょっと困るけど

*3:どんな場合やねん

*4:暇なひとはRのスクリプトで実際に試してみてください

*5:実験データの場合には再試験してください(キッパリ)

*6:いわゆるメタ・アナリシス

*7:フロントドア基準的な方法で明らかにできる可能性はある、かも?

*8:「交絡」の定義については、研究分野間で微妙にちがったりするので、この表現がピンとこない方々ももしかしたらいるかもしれませんがご容赦を

*9:まあ応対している相手の統計リテラシーのレベルにもよる話なので一概には否定はしませんですよ

*10:合流点によるバイアスなど

*11:中間変量による調整の場合など

*12:do演算子のような確率と因果を架橋する概念が必要となる

*13:この用語法も分野によるらしいので「そんなの選択バイアスじゃないやい!」と思われる方々もいらっしゃるかと思いますがご容赦くださいね

*14:たぶん