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Take a Risk:林岳彦の研究メモ

自らの研究に関連するエトセトラについてのメモ的ブログです。主にリスク学と統計学を扱っています。

ちょっとおもてたんとちがう:ミツバチのCCD(蜂群崩壊症候群)のウイルス原因説の論文を読んでみた

リスク

研究室での論文紹介セミナーのために、ミツバチのColony Collapse Disorder(CCD; 蜂群崩壊症候群)のウイルス原因説の論文(Bromenshenk et al. 2010 in PLoS One)を読んでみました。

元論文のリンクはこちら

Gizmodoの以下のニュース
ミツバチはなぜ大量死するのか? 謎ついに解明 - ギズモード・ジャパン
では

メリーランド州の米陸軍エッジウッド化学生物センターとモンタナ州の各大学の昆虫学者らが共同研究した結果、なんと真犯人は菌とウイルスの組み合わせであることがわかったのです。崩壊したコロニーを調べてみたら、どのコロニーでも菌とウイルスの2段階攻撃でミツバチをノックダウンした形跡が見つかったって言うんですね。


菌とウイルスどちらか片方ならまだOKなんだけど、このふたつがタッグを組むとたちまちキラーカクテルに変身!ミツバチは百発百中の確率で死んじゃうのですよ。

と書いてあったので(強調引用者)、さぞかし菌とウイルスの相乗作用が強いのだろうと思っていました。

しかし、論文内に実際にあった図はこんな感じでした*1

縦軸がミツバチの生存率で、横軸が菌*2and/orウイルス*3を接種してからの日数です。がコントロール、◯が菌を接種した系、がウイルスを接種した系、がウイルスと菌の両方を接種した系です。

図を見る限り「菌◯」と「ウイルス」の生存率への「複合影響」はおおむね単に「相加的*4」って感じですよね? どっから「キラーカクテル」とか「百発百中の確率で死んじゃう」いう表現が出てきているんだか。まったく。

まあ「コロニー崩壊」に関しては菌とウイルスが「相乗的」に効いている可能性はありますけれど、少なくともそういうことを示す直接的実験がこの論文内でやられているわけでもありません。この辺りのハッタリ感が掲載誌がPLoS ONEに留まっていることの理由なのでしょうか*5


個人的に気になるのは、この「菌」と「ウイルス」の相互作用でCCDに特異的な「ミツバチが巣に帰ってこない」という病態が再現されるかどうかというところです。この病態が再現されたらCCDの原因としてかなり強固なエビデンスだなあと思えるのですが、肝心のそこのところが示されないとちょっとエビデンスとしてはまだ弱い気もします*6


#本ブログの過去のミツバチのCCD関連の記事はこの辺り()()()など。

*1:PLoSなので出典元を銘記してあれば図を載せても著作権上の問題はない。はず。

*2:ノゼマ病微胞子虫

*3:invertebrate iridescent virus

*4:相加的とは「単独の効果の足し算」という意味。厳密にいうと相加的ですらないかもしれませんが、少なくともsynergisticではないかんじ

*5:PLoS ONEはいわゆるピアレビューがないことで有名/迅速に結果を公表して注目を集めるには良い雑誌だけれどもサイエンスの質の格付けとしての雑誌の評価は不確定/でもIFは4.3くらいあるらしい(けっこう高い!)

*6:そこの部分はNatureとかScience用にまだ隠してある、とかなのかもしれないですが