Take a Risk:林岳彦の研究メモ

自らの研究に関連するエトセトラについてのメモ的ブログです。主にリスク学と統計学を扱っています。

まとめた保高さん:放射性セシウム汚染土壌の管理・浄化の方法まとめのメモ

産総研保高徹生さんが、放射性セシウム汚染土壌の管理・浄化の方法についての論考を公開されたのでメモいたします*1

汚染土壌の管理浄化の諸方法についてその利点・欠点・制約条件などをプロの人がまとめたものって意外とないような気がしますので、とても貴重なまとめかと思います。(共著者には大林組・鴻池組竹中工務店などの方々も)(*追記:いちおう農水省の報告もメモ)

ダウンロードはこちらから:

「放射性セシウム汚染土壌の措置方法に関する一考察」

文体スタイルが"バリ硬"の論文形式なので読者を選ぶかもしれませんが、丁寧に書かれているので丁寧に読んでいけばなんとかなるかと思います。

とりあえず概要を引用(強調引用者):

 東日本大震災に伴い発生した原子力発電所の事故により広域で放射性物質(主に放射性セシウム)により汚染された土壌が生じた。今回の汚染規模を鑑みると、保管・埋立場所の確保等の観点から短期間(1〜2年以内など)に全ての汚染土壌を除去することは難しいのが現状である。そのため、濃度レベルや土地利用に応じて汚染の除去以外のリスクを低減する措置方法も活用することで、環境リスク(健康リスクや汚染土壌からの放射性物質の環境中への移行)を低減するとともに、土地を再生していく必要がある。本稿では、上記の問題意識を基礎として、放射性セシウム汚染土壌の環境リスクを低減するために、現実的に選択可能な措置方法を整理することを目的とした


 本稿では、2章において放射性セシウム汚染土壌の挙動と被ばく経路を、3章において放射性セシウム汚染土壌の措置方法及び個別技術の整理を行い、4章で措置技術の選択における課題とそれに対する対応(私案)を述べる。具体的な措置方法としては、汚染の管理として(1-1) 自己減衰を利用した制度的管理、(1-2)原位置管理(封じ込め・遮蔽)、汚染の除去として(2-1)原位置処理、(2-2)掘削除去&土壌処理、(2−3)掘削除去&保管・埋立に分類し、それぞれ適用可能な措置技術の整理、実施工における組合せ、コストや措置必要期間、土地利用制限や間接・外部費用を整理した。また、これらの措置を適用する際の技術的評価項目を整理し、広域汚染土壌に対して効率良くリスク低減を図りつつ社会経済的影響を緩和するための方策について議論を行った。


「思いつきレベル」の話に振り回されないためにもぜひご一読を。


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*1:保高さん仕事してるなえらいなあ