Take a Risk:林岳彦の研究メモ

自らの研究に関連するエトセトラについてのメモ的ブログです。主にリスク学と統計学を扱っています。

【!開催延期注意!】研究集会『エビデンスは棍棒ではない2』@東大本郷(期日未定) 

こんにちは。林岳彦です。冬は寒いですね。言葉は三角、こたつは四角、ネコは丸くなる季節です。今回は研究集会の告知(速報版)です。まさかの続編の開催です。何卒よろしくお願いいたします!


国立環境研究所社会対話・協働推進オフィスの主催により、「エビデンス、リスク分析と公共政策の関係について、価値/規範の側面から議論する」ことを目的としたオープンな研究集会を3月5日(木)に以下の要領で開催いたします。ご興味のある方々のご参加を広くお待ちしております!

【*参加費・事前登録等の必要はありません。ご所属や専門分野を問わずどなたでもご参加を歓迎いたします。また、来場者が会場の定員125名を超えた場合には席が不足する可能性がありますが、予めその旨ご了承のほどよろしくお願いいたします】

研究集会『エビデンスは棍棒ではない2:エビデンス、ナラティブ/コンテクスト、規範的議論のベストミックスに向けて』

注意:新型コロナウイルスの広がりを受けて、開催が延期(期日未定)となりました
新型コロナウイルスが落ち着き次第、また改めての開催を予定しておりますので、その際にはまたよろしくお願いいたします!
2020年3月5日(木)13:30-16:45(*終了時間は早まる可能性があります)
於:東大本郷ダイワハウス石橋信夫記念ホール
https://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam01_14_04_j.html

企画者:林岳彦(国立環境研)・加納寛之(大阪大)・岸本充生(大阪大)

企画趣旨
環境学やリスク学の研究者がその活動の中で価値・規範にかんする問題に直面したとき、それをどう学術-公共政策のアジェンダとして学術的に/制度的に取扱いうるのかは悩ましい問題である。また、もしそれらの研究者が生産するリスク評価や学術的エビデンスが価値・規範の問題とあまりに切り離されて取り扱われてしまうと、社会的な議論の深まりを逆に阻害する道具となりかねないという懸念もある。昨年度の第1回「エビデンスは棍棒ではない」研究集会に続く第2回目の開催となる本研究集会では、「エビデンス、ナラティブ/コンテクスト、規範的議論のベストミックスへ」をテーマに、エビデンスとその背後にある質的・社会的な論点との関係を中心に議論する。

内容概要(*以下、演題は全て現時点でのものであり今後変更の可能性があります)
趣旨説明:
林岳彦(国立環境研)『この悲しみをどうすりゃいいの ― 数値と客観性と公共政策と私』

講演:
(1) 岸本充生(大阪大・データビリティフロンティア機構)『どうしてみんな科学(だけ)で決まったふりをしたがるのか』

(2) 齊藤誠(名古屋大・経済学研究科)『科学的なエビデンスと政策的なコンテキスト:豊洲市場移転における意思決定過程を振り返って』

(3) 安東量子(福島のエートス/NPO福島ダイアログ)『個人線量の政策への利用について:質的な論点からの考察』

(4) 五十嵐泰正(筑波大・人文社会科学研究科)『社会学はやはり「役立たず」なのか:「伝わらない」ことが前提の社会で何をなすべきだったのか』

コメント:
田中幹人(早稲田大・政治学研究科)『科学的情報の共有と社会的受容:マス/ソーシャルメディアの分析から』
佐野亘(京都大・地球環境学堂)『公共政策学の観点から』


関連図書
安東量子 (2019) 海を撃つ――福島・広島・ベラルーシにて. みすず書房

海を撃つ――福島・広島・ベラルーシにて

海を撃つ――福島・広島・ベラルーシにて

  • 作者:安東 量子
  • 出版社/メーカー: みすず書房
  • 発売日: 2019/02/09
  • メディア: 単行本
一ノ瀬正樹編(2018)福島はあなた自身 災害と復興を見つめて. 福島民報社
福島はあなた自身 災害と復興を見つめて

福島はあなた自身 災害と復興を見つめて

  • 作者:福島民報社
  • 出版社/メーカー: 福島民報社
  • 発売日: 2018
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
五十嵐泰正 (2018) 原発事故と「食」 - 市場・コミュニケーション・差別. 中央公論新社
原発事故と「食」 - 市場・コミュニケーション・差別 (中公新書)

原発事故と「食」 - 市場・コミュニケーション・差別 (中公新書)

  • 作者:五十嵐 泰正
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2018/02/21
  • メディア: 新書
五十嵐泰正 (2012) みんなで決めた「安心」のかたち――ポスト3.11の「地産地消」をさがした柏の一年. 亜紀書房齊藤誠 (2018)〈危機の領域〉: 非ゼロリスク社会における責任と納得. 勁草書房
〈危機の領域〉: 非ゼロリスク社会における責任と納得 (けいそうブックス)

〈危機の領域〉: 非ゼロリスク社会における責任と納得 (けいそうブックス)

  • 作者:齊藤 誠
  • 出版社/メーカー: 勁草書房
  • 発売日: 2018/04/24
  • メディア: 単行本
齊藤誠 (2015) 震災復興の政治経済学 津波被災と原発危機の分離と交錯. 日本評論社
震災復興の政治経済学 津波被災と原発危機の分離と交錯

震災復興の政治経済学 津波被災と原発危機の分離と交錯

  • 作者:齊藤 誠
  • 出版社/メーカー: 日本評論社
  • 発売日: 2015/10/14
  • メディア: 単行本
齊藤誠 (2011) 原発危機の経済学. 日本評論社
原発危機の経済学

原発危機の経済学

  • 作者:齊藤 誠
  • 出版社/メーカー: 日本評論社
  • 発売日: 2011/10/20
  • メディア: 単行本
村上道夫・永井孝志・小野恭子・岸本充生 (2014) 基準値のからくり 安全はこうして数字になった. 講談社
基準値のからくり (ブルーバックス)

基準値のからくり (ブルーバックス)

今年こそ真人間になりたい — WIFIから逃れるために2019年に買ったもの

統計的因果推論の本の執筆をしているのですが、進んでいません。実は執筆依頼を引き受けたのはもうかれこれ3年前になるのですが、かなりの部分、進んでいません。

執筆が遅れている原因は、はっきりしています。それは世界中に張り巡らされたWIFIのせいです。

WIFIがあるとついついインターネッツをみてしまうのです。しかしインターネッツはからっぽの洞窟なのです。からっぽの洞窟の中で見つけた宝箱の中さえもからっぽなのです。いや、本当は、完全には、からっぽではない、のだけれど、いくら洞窟の中を探検をして戻ってきても肝心の原稿は全く進んでいないのです。インターネッツは罠なんです。孔明の。


WIFIは人生の伴侶ではない


ついに私はそう気づきました。気づいた上に念のために復唱しました。

私は本を書かねばならないのです。本を書くためにWIFIから逃れねばならないのです。


というわけで、わたくしは2019年にWIFIから逃れるために幾つかの買い物をしたので、その買い物の次第をここにメモっておきます。

(1) 省機能携帯電話として:Nichephone-s 4G

現代社会においてWIFIとインターネッツから逃げるためにはまずスマホから逃げる必要があります。とはいえ携帯電話がないといざというときに連絡がとれなくて困ります。そこで、スマホは子供にお下がりとしてあげて、自分はNichephone-s 4Gというシンプルなガラケーに買い替えました。

良かったところ:

  • 小さい
    • かなり小さいので財布によっては定期入れのところに収納できる*1。これで2つ(財布+携帯)の荷物が一つにまとまったのは快適
  • ひとつ前の世代のものより全体的に質が向上した*2
  • いちおうSMSには対応している
    • Googleアカウントなどでの二段階認証での認証番号を受信できるのはよかった*3

今ひとつなところ:

  • 操作性はいまひとつ
    • 基本的には操作はしづらい。携帯電話を使用する頻度が高い人にはあまりおすすめできない
  • 端子が特殊
    • 端子が特殊なので付属の端子プラグを持ち歩かないと出先で充電が切れるとかなり困る

(2) 省機能文章書きデバイスとして:ポメラ DM200

インターネッツから逃げるためには、スマホだけでなくパソコンからも逃げる必要があります。とはいえパソコンがないと原稿が書けないないので困ります。というわけで、文章書き専門デバイスとしてポメラDM200も購入してみました。

良かったところ:

  • WIFIでインターネッツが見れないので執筆に集中できる(さいきんは執筆はほとんどポメラ@喫茶店でしている)
  • 実は長らくあまり使い方がハマらなかったのだけれど、パラグラフモードでmarkdownで執筆するとわりと快適に書けるようになった
    • これはパソコン側のmarkdownエディタをTyporaに移行したことで、数式を含むmarkdownテキストのポメラ→PCへの取り回しについて一定の段取りがついたことも大きな要素としてある

今ひとつなところ:

  • 無線でのテキスト同期は色々とうまくいかず、結局SDカードでパソコンとデータをやりとりしており色々めんどい
  • 現在の執筆フロー(色々めんどい):ポメラでmarkdown形式で執筆→SDカードでMac/Winに→Typoraで編集・PDF書き出し・印刷→紙で内容の検討→紙をみながらポメラでmarkdown形式で再執筆→(もどる)

(3) iPhoneの代替として:iPad mini

iPad mini Wi-Fi 64GB - シルバー (最新モデル)

iPad mini Wi-Fi 64GB - シルバー (最新モデル)

  • 発売日: 2019/03/28
  • メディア: Personal Computers
スマホをやめてNichephoneにしたものの、ときおりは出先でネットをチェックする必要が出てきます。そのため出先でのネット端末としてiPad mini(セルラーモデル)をiPhoneのかわりに購入しました。

良かったところ:

  • インターネッツから逃げたいときにはNichephone-sとポメラだけもって出かければよいし、ネットが必要な場合だけiPad miniを持っていくという運用が可能になった
  • iPhoneより大きいので老眼気味の眼にはとても優しい

今ひとつなところ:

  • とくにない
  • たまにiPhoneでないとできないことがある(Apple Watchとの連携など)

(4) 自宅ロシア化計画として:WiFiスマートプラグ

自宅のインターネッツも必要に応じて元から遮断できればと思い、WIFIルータにスマートプラグをつけて時間制限でのオンオフ設定もしてました。これも一定の効果はありましたが、携帯があると4Gで結局インターネッツを見てしまえるのと、夜に友達とフォートナイトしたいという子供からの切なる要望があり今は使っていません。(逆に子供のWIFI利用を制限したい場合にはなかなか効果的であると思う)

今年こそ真人間になりたい

というか、そもそも意志を強くもつことによりインターネッツを見るのを我慢して執筆すればよいだけではないかというご意見もあるかもしれません。私もそう思います。

今年こそそんなグリットに溢れた真人間になりたいです。


そんな真人間に少しでも近づくために、今年は元旦から般若パイセンの筋トレアルバムを無限リピートしています:

「IRON SPIRIT」(CD+DVD)(特典なし)

「IRON SPIRIT」(CD+DVD)(特典なし)

  • アーティスト:般若
  • 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
  • 発売日: 2018/12/19
  • メディア: CD

般若パイセンに鼓舞されていたら、今年こそ真人間になれるような気がしてきました。

今年こそは真人間になりたいです。それか中一から人生をやり直したいです。


そんな2020年の始まりですが、本年も何卒よろしくお願いいたします。

*1:因果関係は不明であるが、この電話を財布に入れていたところクレジットカードが不調になって交換したことがある。もしかしたら携帯電話の裏側のマグネットのせいかもしれないと思い、今は一応財布の中の携帯の裏側の位置にホームセンターで買った小さく薄い鉄板を入れて磁気の影響に対処している(が有効なのかはよくわからない)

*2:子供用の専用機として一つ前の世代のNichephone-s購入したことがあったのだけれど、こちらは何かと使いづらかったので結局あまり使われないままある日間違って洗濯してしまい壊れてしまった。現世代のNichephone-s 4Gではかなり使い勝手は改善した

*3:ただ操作性の問題でSMSを書く気にはとてもならない。

講演資料アプ:『環境分野における"EBPM"の可能性と危うさ:他山の石として』

環境リスク分野の立場からEBPMを議論した発表資料をアプしました。twitterでは告知しておりましたが、ブログにあげてなかったのでこちらでも告知しておきます。(slideshare、あとから誤植が見つかっても差し替えができないのが困りますね)

講演内容はいきおい批判的なトーンですが、ナイーブな議論やハイプが嫌いなだけで、EBPMやRCT自体が嫌いなわけではありません。

【開催告知】公開研究集会『研究者/研究所として“EBPM”にどう関わるとよいのか?』12/10火@国立環境研

「くだもの四天王」といえば「桃・梨・メロン・ぶどう」ですよね! こんにちは。林岳彦です。

来る12/10に、国立環境研究所の環境経済評価連携研究グループによる企画として、以下の公開研究会を開催します。所内外を問わず、参加費・事前登録等なしでどなたでも参加できますので、ご興味のある方の積極的なご参加をお待ちしております!

================================
公開研究集会『研究者/研究所として“EBPM”にどう関わるとよいのか?』
企画者:横尾英史(一橋大学&国立環境研究所)、林岳彦(国立環境研究所)


趣旨説明:
現在、エビデンスにもとづく政策形成を促すことを目指した「Evidence-Based Policy Making (EBPM)」の潮流が英米を中心として世界的に広まってきています。また、日本でも行政改革推進本部を中心にEBPMの行政への導入・推進の取り組みが始まっています。

EBPMは、学術的知見を政策へ橋渡しするための“回路”として、学術界にとっても非常に重要な潮流といえます。しかしながら、研究者/研究所等として、「実際問題としてEBPMとどう絡んでいったらよいのか」は、必ずしも自明な話ではありません。その理由の一つは、EBPM概念そのものの多義性にあります。ひとくちに“EBPM”といってもその指示内容は人や場合により大きく異なるため、そもそも「どのEBPM」にコミットするべきなのかという悩みが生じます。また、EBPMを実装していく上では、行政側や学術側における組織文化上の制約とどう向き合っていけばよいのかという悩みも生じます。さらに、EBPMにおいて重要となる因果推論手法に関する理解が(行政においても学術界においても)まだまだ浅いという悩みもあります。

本集会では、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの井上領介氏をお招きして“EBPM”自体および、ランダム化比較試験を中心に「EBPMで重要となる政策の因果効果の推定法」について解説をいただきます。井上氏らは2019年ノーベル経済学賞を受賞したデュフロとクレーマーらの因果推論に関する著書を翻訳し、受賞前のタイミングで公刊されています。

政策評価のための因果関係の見つけ方 ランダム化比較試験入門

政策評価のための因果関係の見つけ方 ランダム化比較試験入門

  • 作者: エステル・デュフロ,レイチェル・グレナスター,マイケル・クレーマー,小林庸平,石川貴之,井上領介,名取淳
  • 出版社/メーカー: 日本評論社
  • 発売日: 2019/07/25
  • メディア: 単行本
  • この商品を含むブログを見る

本ご講演の後、「研究者/研究所等として“EBPM”とどう関わっていけばよいのか」についてフロアを交えて話題提供・議論していく予定です。

本集会はオープンでの開催となりますので、事前登録や参加費用等なくどなたでもご参加可能です。研究所等でEBPMの導入や推進についてご検討されている方々にぜひご参加いただき、「EBPMとアカデミアのこれから」について一緒に考えていければと思います。


開催日時場所:
2019年12月10日(火)15:00 - 17:00 @国立環境研究所中会議室(アクセス会議室への順路)(*終了時間については変更の可能性あり)

プログラム:
はじめに 横尾英史(一橋大学&国立環境研究所)

講演「因果推論とEBPM:環境分野を念頭に」
講師:井上領介(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)

総合討論のための話題提供1「食料・農業分野におけるEBPMの事例紹介」
佐々木宏樹(農林水産政策研究所)
総合討論のための話題提供2「EBPM、“E”から見るか?“PM”から見るか?」
林岳彦(国立環境研究所)

総合討論:研究者/研究所として“EBPM”にどう関わるとよいのか?

おわりに 日引聡(東北大学&国立環境研究所)
================================

因果推論駅の奥へ:諸統計的因果推論理論の繋がりの講演資料のアプ

部屋とYシャツと構造と力と私、こと林岳彦です。こんにちは。本ブログではお久しぶりです。


先週末に、社会学系の研究会からの依頼で、(1)因果推論の諸理論が奥の方でどう繋がっているか、(2)その"奥の方"で「質的理解」と「量的分析」がどう繋がっているか、をテーマに講演いたしました。その資料をアップロードしましたのでご報告いたします。



ついでに6月に佐賀大で行った、「生態学者における統計的因果推論の導入」についての講演資料も(以前に)アップしておりましたのでご報告いたします。


現在わたくしは「筆頭著者論文を書かない」という非行の更生のため同僚の保護観察下に置かれているため、本ブログの更新もままなっておりませんが、頑張って論文を書きたいと思います。早く人間になりたい。

参考文献

Counterfactuals and Causal Inference: Methods and Principles for Social Research (Analytical Methods for Social Research)

Counterfactuals and Causal Inference: Methods and Principles for Social Research (Analytical Methods for Social Research)

The Book of Why: The New Science of Cause and Effect

The Book of Why: The New Science of Cause and Effect

構造的因果モデルの基礎

構造的因果モデルの基礎

社会科学と因果分析: ウェーバーの方法論から知の現在へ

社会科学と因果分析: ウェーバーの方法論から知の現在へ

岩波データサイエンス Vol.3

岩波データサイエンス Vol.3

社会学はどこから来てどこへ行くのか

社会学はどこから来てどこへ行くのか

調査観察データの統計科学―因果推論・選択バイアス・データ融合 (シリーズ確率と情報の科学)

調査観察データの統計科学―因果推論・選択バイアス・データ融合 (シリーズ確率と情報の科学)

Causal Inference for Statistics, Social, and Biomedical Sciences: An Introduction

Causal Inference for Statistics, Social, and Biomedical Sciences: An Introduction

正式版告知:研究集会『エビデンスは棍棒ではない --- われわれは価値/規範と公共政策についていかに語りうるのか』3/11@国立環境研

こんにちは。林岳彦です。今回は研究集会の告知(正式版)です。年度末シーズンでの開催となりますが、研究費が余ったから帳尻合わせでやるような類の研究集会とは全く異なるものですので、ご参加のご検討のほど何卒よろしくお願いいたします!


ーーーーー
国立環境研H30所内公募研究『環境分野におけるEBPM』およびFoRAM(リスク評価勉強会*1)の共催として、「エビデンス・リスク分析と公共政策の関係について、価値/規範の側面から議論する」ことを目的としたオープンな研究集会を3/11(月)に以下の要領で開催いたします。ご興味のある方々のご参加を広く歓迎いたします。(参加費・事前登録等の必要はありません。所内外や専門分野を問わずどなたでもご参加を歓迎いたします)

研究集会『エビデンスは棍棒ではない --- われわれは価値・規範と公共政策についていかに語りうるのか』
3/11(月)14:00-16:45
於:国立環境研究所地球温暖化研究棟交流会議室( https://www.nies.go.jp/sisetu/map/index.html

[国立環境研究所の所外からご参加される方は、まず正門左手の守衛室にて入構手続きをお済ませの上、地球温暖化研究棟にお越しください。交流会議室は地球温暖化研究棟の入り口から入って1F右手奥左側となります。]

企画趣旨
環境学やリスク学の研究者がその活動の中で価値・規範にかんする問題に直面したとき、それをどう学術-公共政策のアジェンダとして学術的に/制度的に取扱いうるのかは悩ましい問題である。また、もしそれらの研究者が生産するリスク評価や学術的エビデンスが価値・規範の問題とあまりに切り離されて取り扱われてしまうと、社会的な議論の深まりを逆に阻害する道具となりかねないという懸念もある。本研究集会では、公共政策の規範的分析を専門とする佐野亘先生のお話を基調として、学術知と公共政策と価値・規範の関係について議論する。

発表内容
(1) 林岳彦(国立環境研・環境リスク健康研究センター)『規範的リスク分析を待ちながら --- 趣旨説明』
*研究集会全体の企画趣旨は上述のとおり。各講演についての企画趣旨は末尾参照のこと。

(2) 佐野亘(京都大学・地球環境学堂)『なぜ規範的政策分析か?-公共政策学における価値と規範』
概要:公共政策学は、政策過程に関する実証的な研究と、政策改善を直接の目的とする規範的な研究にわかれる。後者の規範的な研究をおこなおうとすると、最終的になにをもってよいとするか、という価値判断の問題が避けられないことが多い。ところが、どうすれば合理的な価値判断ができるか、という問いについては、意外に議論がなされていない。報告者は、規範的政策分析が必要とされるのは、まさにこの点にあると考えている。本報告では、公共政策学の基本的な内容を紹介したうえで、なぜ規範的政策分析が必要とされるのか、またそのための具体的な分析手法としてどのようなものが考えられるのか、考えたい。

(3) 江守正多(国立環境研・地球環境研究センター)『気候科学は社会の価値にどう向き合うか』
概要:気候変動問題に関わる自然科学者として、報告者が価値について考えてきたことをお話ししたい。気候変動はそもそも政治性の高い問題であり、報告者は当初はその中でできる限り価値中立的に振舞おうと努めた。しかし、次第にそのようなポジションは無効であると考えるようになる。パリ協定成立以降、報告者のポジションは変容した。価値の中でもがく専門家の一例の話としてお聞き願いたい。

(4) 加納寛之(大阪大学・人間科学研究科)『環境分野におけるエビデンスに基づく政策形成の適用に向けて: エビデンス概念の整理と評価軸の検討』
概要:エビデンスに基づく政策形成(EBPM)が環境分野でも求められている。しかしながら、他分野で支配的なEBPMの考え方を環境分野にそのまま適用することは有効でない。本講演では、環境分野のエビデンスの種類や役割を確認し、エビデンスをその生産から活用に渡る一連の過程で評価するための視点を整備することで、環境分野に適用可能なEBPMの枠組みを提示する。

(5) 村上道夫(福島県立医科大学医学部健康リスクコミュニケーション学講座)『リスクと"価値":福島災害後の経験から』
概要:2011年の福島災害は、放射線被ばくや心身の健康リスクに限らず、社会的健康リスクも含む多様な健康リスクをもたらした。本講演では、それらのリスク研究の事例を紹介する。また、災害後の研究・調査と倫理的課題について、具体的な事例を交えながら、社会と科学の総合的な作用について議論する。


【以下、企画者(林岳彦)による各講演についての企画趣旨の説明】
・佐野亘さんのご講演
佐野さんのご専門は価値・規範の観点からの政策分析です。(特に、特定ジャンル内の話の中で終始するわけではない気候変動や福島の話に関わるような)リスクの話をしていると「価値を考えることが重要」のような話は頻繁に出てきます。しかし、たとえば「正義」「自由」「権利」「責任」といった価値・規範に関する概念を正確かつ混乱なく使用して議論することは規範論について一定のトレーニングを経ていない人間には実はかなり難しいものがあり、もし規範的分析を公共的決定の礎となりうるレベル感で行おうと考えるならば佐野さんのようなプロと一緒にやることが望ましいと考えています。(例えば中西準子氏は価値についてはセンスだけで語ってきた側面があり、それが一概に悪かったとは言わないものの、環境学やリスク学の研究者が価値について語るとき今後もずっとそういうスタイルで良いのか --- という話です。) 今回は佐野さんにご自身の「規範的政策分析」のコンセプトについて語っていただき、環境学・リスク学との協働の可能性について探っていければ良いなと考えています。

・江守正多さんのご講演
江守さんはかねてより気候変動に関する市民とのコミュニケーションにおいて精力的な活動を続けられており、近年は国環研内に「社会対話・協働オフィス*2」を立ち上げて活動の幅をさらに広げられています。本研究集会では「気候変動と"価値"の問題」を中心テーマにお話いただきます。

・加納寛之さんのご講演
加納さんにはEvidence-Based Policy Makingに関する研究(林との共同研究)のお話をいただきます。実はEBPMと環境研究/リスク評価/管理の間には実務にも関わってくる微妙な関係性があります。例えば、トランプ政権が環境規制の正当化に必要なエビデンスレベルを引き上げることによりEPA(米国環境保護庁)による環境規制の動きを無力化してくるのではないか --- という懸念はもはや現実的なものとなっており、そのため「エビデンスレベル」の運用のあり方については環境学・リスク学の観点からも無関心ではいられないところがあります。そのような問題意識のもと、まずはEBPMにおける鍵概念となる「エビデンス」について環境研究の観点からの概念整理を行う研究を進めており、今回はその研究成果についての発表となります。将来的には環境学・リスク学(レギュラトリーサイエンス)とEBPMについての建設的な関係性を構築することを目指しており、今回の講演はその第一歩を意図したものになります。

・村上道夫さんのご講演
村上さんは、将来的に福島の原発事故が歴史的に総括される際には最重要な学術的知見の一部として参照されると思われるような「原発事故に関わる健康リスク評価」等についての一連の非常に重要な研究を行われてきています*3。本研究集会では、それらの研究についてご紹介いただくとともに、福島でリスクについて評価/分析/考察することで直面した(せざるをえなかった)価値/規範の問題について語っていただく予定です。企画全体の中での意図としては、それらの価値/規範についての問題をどう学術-公共政策のアジェンダとして取扱いうるのだろうか?というところを全体の議論として繋げていければと考えています。


関連文献:

  • 佐野亘(2010)『公共政策規範』ミネルヴァ書房

公共政策規範 (BASIC公共政策学)

公共政策規範 (BASIC公共政策学)

  • 佐野亘(2013)『規範的政策分析の確立に向けて』公共政策研究, 13, 65-80

ci.nii.ac.jp

  • ジョナサン・ウルフ(2016)『「正しい政策」がないならどうすべきか 政策のための哲学』勁草書房

「正しい政策」がないならどうすべきか: 政策のための哲学

「正しい政策」がないならどうすべきか: 政策のための哲学

  • 江守正多(2013)『異常気象と人類の選択』角川SSC新書

異常気象と人類の選択 (角川SSC新書)

異常気象と人類の選択 (角川SSC新書)

  • 村上道夫ら(2014)『基準値のからくり』講談社ブルーバックス

基準値のからくり (ブルーバックス)

基準値のからくり (ブルーバックス)

*1: FoRAM( https://staff.aist.go.jp/kyoko.ono/FoRAM/home.html )というのは、もともとはリスク学系研究者有志若手が立ち上げた「リスク学若手の会」のような性質の会です。発足から10年ほどたち主要メンバーも40代後半に差し掛かり、リスク学会およびリスク系の公共政策の実務において中心的な役割を担いつつある状況となっております。そんな中で、(リスク分析というのは政策分析のいちジャンルでしかないことにもっと自覚的になり)そろそろ公共政策学との関わりを模索していって良い時季ではないかと考えたことが本企画の意図の一つとなっています。

*2:http://www.nies.go.jp/taiwa/

*3:https://www.fmu.ac.jp/home/risk/michio/indexj.htm#publication

(*企画意図追記版*告知)研究集会『エビデンスは棍棒ではない --- われわれは価値/規範と公共政策についていかに語りうるのか』3/11@国立環境研

こんにちは。林岳彦です。秋が訪れました。エルドレッドがいなくなるのも、実に、寂しいですね。

今回は前回の速報版の告知に、企画意図の解説を追記したものです。年度末シーズンでの開催となりますが、研究費が余ったから帳尻合わせでやるような類の研究集会とは全く異なるものですのでみなさま何卒よろしくお願いいたします!

国立環境研H30所内公募研究『環境分野におけるEBPM』およびFoRAM(リスク評価勉強会*1)の共催として、「エビデンス・リスクと公共政策の関係について、価値/規範の側面から議論する」ことを目的としたオープンな研究集会を3/11(月)に以下の要領で開催いたします。


ご興味のある方々のご参加を広く歓迎いたします。(参加費・事前登録等の必要はありません/より詳細な内容について追ってお知らせいたします)


研究集会『エビデンスは棍棒ではない --- われわれは価値/規範と公共政策についていかに語りうるのか』(仮題)
2019年3/11(月)14:00-17:30(終了時間は若干早まる可能性あり)
於:国立環境研究所温暖化棟交流会議室( https://www.nies.go.jp/sisetu/map/index.html


内容予定:(*現時点での講演タイトルは全て林による仮題です)

  • 林岳彦(国立環境研・環境リスク健康研究センター)『規範的リスク分析を待ちながら --- 趣旨説明』(仮題)
  • 佐野亘(京都大学・地球環境学堂)『規範的政策分析の確立に向けて』(仮題)
  • 江守正多(国立環境研・地球環境研究センター)『気候変動リスクと"価値"の問題』(仮題)
  • 加納寛之(大阪大学・人間科学研究科)『環境分野におけるEvidence-Based Policy Makingの適用に向けての"エビデンス"概念の整理と批判的検討』(仮題)
  • 村上道夫(福島県立医科大学医学部健康リスクコミュニケーション学講座)『リスクと"価値" --- 東日本大震災以後の経験から』(仮題)


[追記:林による本企画意図の解説]
(1) 趣旨説明
今回の研究集会のメイン講演者は、公共政策学を専門とする京都大学の佐野亘先生です。現在、リスク研究を専門とする中堅研究者の多くは実は公共政策については体系的に学んだ経験が特にあるわけではなく(ガンダムに乗り込んだアムロのように)ある意味で成り行き上で公共政策に関わることになった人がかなり多いものと思われます。それでもリスク研究の対象とする範囲が特定ジャンル内に留りつづけたならば問題は無いのですが、リスク研究の対象が気候変動や福島の問題などの一筋縄ではいかないものへと広まっていく中で、今後もそのまま公共政策のプロの知と殆ど触れないまま進んでいって果たして本当によいのだろうか?という問題意識が林にはありました。今回に佐野先生をお呼びするのは、リスク研究としてそろそろ公共政策のプロの知との関わりを始めてみてはどうだろうか --- という同年代のリスク研究者に対する呼びかけの意図をもつものです。特に、気候変動や福島の問題においては、リスク評価/分析を進めていくことにより避けがたく価値/規範の問題について直面せざるを得ない側面があります。リスク研究者がそれらの価値/規範についての問題に直面したとき、それをどう学術-公共政策のアジェンダとして学術的に/制度的に取扱いうるのだろうか? --- ということを本研究集会を通して議論していければと考えています。


(2) 佐野亘さんのご講演
佐野さんのご専門は価値・規範の観点からの政策分析です。(特に、特定ジャンル内の話の中で終始するわけではない気候変動や福島の話に関わるような)リスクの話をしていると「価値を考えることが重要」のような話は頻繁に出てきます。しかし、たとえば「正義」「自由」「権利」「責任」といった価値・規範に関する概念を正確かつ混乱なく使用して議論することは規範論について一定のトレーニングを経ていない人間には実はかなり難しいものがあり、もし規範的分析を公共的決定の礎となりうるレベル感で行おうと考えるならば佐野さんのようなプロと一緒にやることが望ましいと考えています。(例えば中西準子氏は価値についてはセンスだけで語ってきた側面があり、それが一概に悪かったとは言わないものの、リスク研究者が価値について語るとき今後もずっとそういうスタイルで良いのか --- という話です。) 今回は佐野さんにご自身の「規範的政策分析」のコンセプトについて語っていただき、リスク学との協働の可能性について探っていければ良いなと考えています。


(3) 江守正多さんのご講演
江守さんはかねてより気候変動に関する市民とのコミュニケーションにおいて精力的な活動を続けられており、近年は国環研内に「社会対話・協働オフィス*2」を立ち上げて活動の幅をさらに広げられています。本研究集会では「気候変動と"価値"の問題」を中心テーマにお話いただきます。


(4) 加納寛之さんのご講演
加納さんにはEvidence-Based Policy Makingに関する研究(林との共同研究)のお話をいただきます。実はEBPMと環境研究/リスク評価/管理の間には実務にも関わってくる微妙な関係性があります。例えば、トランプ政権が環境規制の正当化に必要なエビデンスレベルを引き上げることによりEPA(米国環境保護庁)による環境規制の動きを無力化してくるのではないか --- という懸念はもはや現実的なものとなっており、そのため「エビデンスレベル」の運用のあり方についてはリスク学の観点からも無関心ではいられないところがあります。そのような問題意識のもと、まずはEBPMにおける鍵概念となる「エビデンス」について環境研究の観点からの概念整理を行う研究を進めており、今回はその研究成果についての発表となります。将来的にはリスク学(レギュラトリーサイエンス)とEBPMについての建設的な関係性を構築することを目指しており、今回の講演はその第一歩を意図したものになります。


(5) 村上道夫さんのご講演
村上さんは、将来的に福島の原発事故が歴史的に総括される際には最重要な学術的知見の一部として参照されると思われるような「原発事故に関わる健康リスク評価」等についての一連の非常に重要な研究を行われてきています*3。本研究集会では、福島でリスクについて評価/分析/考察することで直面した(せざるをえなかった)価値/規範の問題について語っていただく予定です(具体的な内容については調整中)。企画全体の中での意図としては、それらの価値/規範についての問題をどう学術-公共政策のアジェンダとして取扱いうるのだろうか?というところを全体の議論として繋げていければと考えています。

関連文献:
  • 佐野亘(2010)『公共政策規範』ミネルヴァ書房

公共政策規範 (BASIC公共政策学)

公共政策規範 (BASIC公共政策学)

  • 佐野亘(2013)『規範的政策分析の確立に向けて』公共政策研究, 13, 65-80

ci.nii.ac.jp

  • ジョナサン・ウルフ(2016)『「正しい政策」がないならどうすべきか 政策のための哲学』勁草書房

「正しい政策」がないならどうすべきか: 政策のための哲学

「正しい政策」がないならどうすべきか: 政策のための哲学

  • 江守正多(2013)『異常気象と人類の選択』角川SSC新書

異常気象と人類の選択 (角川SSC新書)

異常気象と人類の選択 (角川SSC新書)

  • 村上道夫ら(2014)『基準値のからくり』講談社ブルーバックス

基準値のからくり (ブルーバックス)

基準値のからくり (ブルーバックス)

*1:FoRAM( https://staff.aist.go.jp/kyoko.ono/FoRAM/home.html )というのは、もともとはリスク学系研究者有志若手が立ち上げた「リスク学若手の会」のような性質の会です。発足から10年ほどたち主要メンバーも40代後半に差し掛かり、リスク学会およびリスク系の公共政策の実務において中心的な役割を担いつつある状況となっております。そんな中で、(リスク分析というのは政策分析のいちジャンルでしかないことにもっと自覚的になり)そろそろ公共政策学との関わりを模索していって良い時季ではないかと考えたことが本企画の意図の一つとなっています。

*2:twitterもやってます! https://twitter.com/taiwa_kankyo

*3:https://www.fmu.ac.jp/home/risk/michio/indexj.htm#publication