読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

Take a Risk:林岳彦の研究メモ

自らの研究に関連するエトセトラについてのメモ的ブログです。主にリスク学と統計学を扱っています。

確率と因果を革命的に架橋する:Judea Pearlのdo演算子

皆さまこんばんは。今回から数回のあいだは、久しぶりに統計的因果推論ネタについて書いていきたいと思います。 今回の具体的なテーマは「Judea Pearlのdo演算子」になります。マニアックです。このテーマについては自分でも完全に理解しているわけでは全く…

なぜ共同事実確認に興味があるのか:リスク心理学の観点から

マサヤさんおめでとう!*1 さて。今回は、今週の木曜日(12月8日)の松浦正浩さんのセミナー「マルチステークホルダー状況下における合意形成と科学的情報の接続」の宣伝も兼ねて、なぜリスク研究者である私が「共同事実確認」に興味があるのかについて整理…

全編、いま読むとすごく響かざるをえない:『リスク意思決定論』谷口武俊著

以前にも読んだこの本を、自分の新しいエントリーを書くために再読してみました。リスク意思決定論 (シリーズ環境リスクマネジメント)作者: 谷口武俊,「環境リスク管理のための人材養成」プログラム出版社/メーカー: 大阪大学出版会発売日: 2008/10/15メディ…

素晴らしく勉強になった:『実践!交渉学 ---いかに合意形成を図るか』松浦正浩著

今回は東大の松浦正浩さんが書かれた『実践!交渉学 ---いかに合意形成を図るか』という新書のメモをしておきます。実践!交渉学 いかに合意形成を図るか (ちくま新書)作者: 松浦正浩出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2010/04/07メディア: 新書購入: 9人 ク…

『統計的因果推論:モデル・推論・推測』を読む(その4)

前回からの続きです。いくつか抜き書きしていきます。今回は「1.4 関数因果モデル」の部分。 本書では、因果関係をLaplaceの準決定論的概念*1を用いて記述し、これを確率的概念と対比させ、因果的な実態を定義し、解析する。この概念を選択した理由は3つあ…

『統計的因果推論:モデル・推論・推測』を読む(その3)

前回からの続きです。今回は因果ベイジアン・ネットワークについての説明。 第一章 確率、グラフ、因果モデル入門 「1.3 因果ベイジアンネットワーク」 冒頭を引用します(p22)。 条件付き独立関係を記述するツールとしてDAG*1を解釈することはできるが、そ…

『統計的因果推論:モデル・推論・推測』を読む(その2)

前回からの続きとなります。著者のJudea Pearlはベイジアンネットワークの創始者であり、本書もベイジアンネットワークの説明が主となるようです。ただ全体的な記述がかなり数学的なのでなかなか頭に入ってきませんが。。。 第一章 確率、グラフ、因果モデル…

『統計的因果推論:モデル・推論・推測』を読む(その1)

今回から以下の本を読んでメモを残していきたいと思います。自分の場合、厳密に言うと「ベイズ統計」自体よりも「因果推論」の方に興味があるので。統計的因果推論 -モデル・推論・推測-作者: Judea Pearl,黒木学出版社/メーカー: 共立出版発売日: 2009/02/2…

フィッシャーの「統計的方法と科学的推論」の訳者解説が素晴らしすぎる(その10)

前回からの続きとなります。今回が遂に最終回です。今回はより大きな思想史の観点からの位置づけの議論となります。引用していきます(強調は引用者): これまでフィッシャー対ネイマンの論争点に則して解説してきたが、もう少し離れた点から評価すれば、フ…

フィッシャーの「統計的方法と科学的推論」の訳者解説が素晴らしすぎる(その9)

次回からの続きです。今回は、フィッシャーvsネイマンの対立を、その後の数理統計学の流れの中で議論していく部分となります*1。ちなみにこの訳書は1962年刊行ですので、その時代感覚も含めて読んでいく必要があります。引用していきます(強調は引用者): …

フィッシャーの「統計的方法と科学的推論」の訳者解説が素晴らしすぎる(その8)

前回からの続きです。今回は不偏性に関する議論です。不偏性の簡単な説明については以下も参考になるかと思います。不偏性 前回からの引用の続きです(強調引用者): 推定においてフィッシャーが不偏性の規準を攻撃することも当を得ている。各人が推定する…

フィッシャーの「統計的方法と科学的推論」の訳者解説が素晴らしすぎる(その7)

前回からの続きです*1。便宜上、段落の途中で引用を区切りますがご容赦ください。 ネイマンの考え方にたいするフィッシャーの批判ないし反発は、確かに的を射ている面も多いし、また論理一貫性を追って無理な批判となっている点も見られる。 近似的には同一…

フィッシャーの「統計的方法と科学的推論」の訳者解説が素晴らしすぎる(その6)

前回から続きます(強調は引用者): もう一つの、そうして最もやかましい議論を生じた問題は、区間推定に関してである。 いま上にあげたのと同じ問題について考えると、 となるから、これを変形して と表される。したがってとで限られた区間に母数が含まれ…

フィッシャーの「統計的方法と科学的推論」の訳者解説が素晴らしすぎる(その5)

前回からの続きです: 改めてフィッシャー対ネイマンの論争にもどって、具体的に争点となった問題を説明しよう。 最初に問題となったのは仮説検定論である。フィッシャーは、カール・ピアソンと同じく、仮説検定の問題を、得られた標本が仮定された分布をも…

フィッシャーの「統計的方法と科学的推論」の訳者解説が素晴らしすぎる(その4)

前回の続き(強調引用者): このような立場は、それぞれ現在の統計学におけるいくつかの考え方のあるものを代表しているのである。確率を頻度として考える立場の代表者はフォン・ミーゼスである。彼は確率を集団現象における相対頻度の意味に限定し、さらに…

フィッシャーの「統計的方法と科学的推論」の訳者解説が素晴らしすぎる(その3)

前回から続きます: 統計的推測における”確からしさ”あるいは”確率”の問題を考えるために、三つの段階を区別しなければならない。たとえばものの長さを測る場合をとると、 1.測定の方式(測定の回数等)と観測値からの推定方式を定める。測定方式はいろいろ…

フィッシャーの「統計的方法と科学的推論」の訳者解説が素晴らしすぎる(その2)

前回から続きます。続き(強調は引用者): ところでこのように見てくると、ここで”確からしさ”あるいは”確率”というものについての、いろいろな考え方がからみあっていることがわかるであろう。ネイマンは”確率”をもっぱら客観的に観測可能な繰り返し試行に…

フィッシャーの「統計的方法と科学的推論」の訳者解説が素晴らしすぎる(その1)

本編の方はフィデューシャル推測の項まで書いたのでもう良いかなあ、と思って終わりにして、今回から同書の「素晴らしすぎる訳者解説」のメモを書いていきます。訳者の方は「渋谷政昭・竹内啓」さんなのですが、巻末の訳者解説が本当に素晴らしく完成度が高…

フィッシャーの「統計的方法と科学的推論」が面白すぎる(その12)

前回に引き続き、今回もいわゆるフィデューシャル推測の節。今回が本節(第3章3節 推測度による論法)の最後となります。前回の部分の引用の続きで、フィデューシャル推測の確率論としての取り扱いについての議論がされています(強調は引用者): ハロルド…

フィッシャーの「統計的方法と科学的推論」が面白すぎる(その11)

前回に引き続き、今回もいわゆるフィデューシャル推測の節。前回の部分の引用の続きで、導出したの頻度分布の解釈についての議論になっていきます: 実験者が事前の知識なしに、実験の結果得られたTのある値にもとづいて追求している、の特定の未知の値にた…

フィッシャーの「統計的方法と科学的推論」が面白すぎる(その10)

今回もいわゆるフィデューシャル推測の節。前回の続きから引用: この推理様式の一例として、粒子を未知の頻度で互に完全に独立な時点で放射している放射能源を考えよう。あい続く二つの放射の間隔はランダムで指数分布 にしたがって分布しているだろう。こ…

フィッシャーの「統計的方法と科学的推論」が面白すぎる(その9)

今回から、第3章「いろいろな形の定量的推論」の第3節「推測度による論法」を見ていきます。いわゆる「フィデューシャル推測」ってやつですね。この節は詳しく見ていきたいと思います。冒頭から引用していきます(強調は引用者): 推測度という言葉は、あ…

フィッシャーの「統計的方法と科学的推論」が面白すぎる(その8)

いささか間が空いてしまいましたが、本書のメモも再開します。第3章「いろいろな形の定量的推論」の第2節「より一般的な仮説」より。強調は引用者。 科学的仮説では、一つあるいは二つ以上のパラメータ、つまり調整可能な"定数"が含まれており、それがどの…

フィッシャーの「統計的方法と科学的推論」が面白すぎる(その7)

ちょっと戻って、第2章「初期の試みとその難点」の第4節「確率の意味」からの引用メモ(p35)。強調は本文ママ。 古典的な確率の概念を、個々の場合に適用できるための基本的な要請は、典型的な確率命題における主観的な無知と、客観的な知識との役割をはっ…

フィッシャーの「統計的方法と科学的推論」が面白すぎる(その6)

引用メモその6。有意性検定に対する言及。 第3章「いろいろな形の定量的推論」の第1節「単純な有意性検定」より。強調は引用者。 科学研究における有意性検定の有効性を説明するために、検定にもとづくいろいろな命題が正しかったり誤ったりする頻度を引…

フィッシャーの「統計的方法と科学的推論」が面白すぎる(その5)

引用メモその5。第2章「初期の試みとその難点」の「4.確率の意味」から。フィッシャーの確率概念の捉え方が垣間見える。(特に断りのない限り強調は引用者) 確率の数学的定義に関する言及: しかし数学的な定義は、単にその言葉が演繹的な数学的推論の中…

フィッシャーの「統計的方法と科学的推論」が面白すぎる(その4)

引用メモその4。第2章「初期の試みとその難点」の「2. ジョージ・プール」から。ベイズ法と逆確率に関するフィッシャーの立ち位置が垣間見れる。 (引用者注:ネズミの同型接合体と異型接合体の確率計算の話の流れから) また、実験家が、そのネズミの両…

フィッシャーの「統計的方法と科学的推論」が面白すぎる(その3)

引用メモその3。第2章「初期の試みとその難点」の第1節「トーマス・ベイズ」の最後の部分(p17; 強調引用者)。フィッシャーの先験確率(事前確率)に対する立ち位置がよく分かる。 このように、ベイズの導入した先験確率を表す式は、恣意的な要素を含ん…

フィッシャーの「統計的方法と科学的推論」が面白すぎる(その2)

また引用メモ。「はしがき」の直後の「第2章 初期の試みとその難点」の、第1節「1. トーマス・ベイズ*1」の冒頭を引用(強調は引用者)。 科学的推論の過程、すなわち実験研究者が理解している意味での現実の世界を理解する方法に、合理的な説明を与えよう…

フィッシャーの「統計的方法と科学的推論」が面白すぎる(その1)

最近、ひょんなことからフィッシャーの「統計的方法と科学的推論」(渋谷政昭・竹内啓訳、岩波書店)を譲り受けました。原本が1956年初版、翻訳本が1962年初版になっております。1962年はフィッシャーの没年*1ですので、フィッシャー晩年の著作ですね。この…

分かりやすい&いつの間にか別のことを考えさせないプレゼンを目指すための2冊

研究稼業において避けて通れないのがプレゼンです。 私がプレゼン作成の際に特に参考にしている2冊を紹介しようと思います。 まずはド定番として、私が尊敬してやまない酒井先生のこれから学会発表する若者のために -ポスターと口頭のプレゼン技術-作者: 酒…

実践としての統計学/佐伯胖、松原望

いわゆるcook-book的な統計の本とは対極的な、統計学の背景に存在する考え方(How toではなくWhatとWhy)について書かれた本でした。こういう本はあまり類書がないので勉強になりました。触れられている内容は ネイマンとフィッシャーの立場の違い 主成分分…

大奥/よしながふみ

たまには進化ネタで。といってもマンガの話ですが。一般に多くの種では「オスがメスよりも派手」なことが知られています。例えばクジャクなどを思い浮かべてもらえば分かりますが、あの豪奢な羽根をもっているのはオスの方で、メスの方は案外地味だったりし…

確率的発想法/小島寛之

この本はとんでもなく面白かったです。こんなに刺激的な本はなかなかないと思います。最近私が読んだ本の中では間違いなくベストのうちに入ると思いました。惜しむらくは書名の印象と実際の内容に乖離があることです。この書名のせいで「この本の面白さが本…

An Introduction to probability and inductive logic/ Ian Hacking

「そもそも確率って何?」という問題意識があり読んでみました。結論から言うととても面白かったです。勉強にもなりましたし、読み物としても面白いです。ギリースの「確率の哲学理論」よりもこちらの方がオススメですね*1 *2。で、けっきょく確率解釈の大ま…

リスク意思決定論/谷口武俊

大阪大学の「環境リスク管理のための人材育成」プログラム編による「環境リスクマネジメントシリーズ」の一巻となる「リスク意思決定論」を読みました。全体的に「リスクと意思決定」に関する話題がコンパクトにまとまっている感じで、手っ取り早く全体像を…

ほんとうの「食の安全を考える」/畝山智香子

食品安全情報blogで有名な畝山智香子さんの食品中化学物質のリスク評価の入門書を読みました。私も分野は違えどリスク評価に関わる研究者として一通りの内容は知っているつもりでしたが、リスク評価に特有な様々な概念(ADIとかARfDとかNOAELとか…)について…