Take a Risk:林岳彦の研究メモ

自らの研究に関連するエトセトラについてのメモ的ブログです。主にリスク学と統計学を扱っています。

確率と因果を革命的に架橋する:Judea Pearlのdo演算子

皆さまこんばんは。今回から数回のあいだは、久しぶりに統計的因果推論ネタについて書いていきたいと思います。 今回の具体的なテーマは「Judea Pearlのdo演算子」になります。マニアックです。このテーマについては自分でも完全に理解しているわけでは全く…

なぜ共同事実確認に興味があるのか:リスク心理学の観点から

マサヤさんおめでとう!*1 さて。今回は、今週の木曜日(12月8日)の松浦正浩さんのセミナー「マルチステークホルダー状況下における合意形成と科学的情報の接続」の宣伝も兼ねて、なぜリスク研究者である私が「共同事実確認」に興味があるのかについて整理…

東大松浦正浩さん公開セミナー「マルチステークホルダー状況下における合意形成と科学的情報の接続」の告知(正式版)

東大の松浦正浩さんをお呼びしての公開セミナー@国立環境研究所の告知(正式版)です。 来月の12月8日(木)に東大公共政策大学院特任准教授の松浦正浩さんを国立環境研究所にお招きして公開セミナーをやります! 日時: 12月8日(木)13:30-15:30 場所: …

放射性物質の食品健康影響評価WGの評価書案を読んでみた(その3・同情編)

今回はこのシリーズの(その1・憤慨編)(その2・疑問編)にひきつづき、第9回放射性物質の食品健康影響評価に関するワーキンググループ(以下WGと略)による評価書(案)にたいする私の雑感について整理していきたいと思います。今回は最終回となる「そ…

年内の幾つかのイベントのメモ

10月という月は、この冷凍研究学園都市TSUKUBA CITYにおいてKAKEN BOYSの一員としてKAKEN SINSEIにアツレキまくっておりました。というわけでしばらくアイツ姿くらましておりましたが、そろそろ段々とブログに復帰しようかと思っております。 さて今回はちろ…

告知:東大の松浦正浩さんをお招きして公開セミナーをやります!

今日はちょっとセミナーの告知(速報版)を:再来月の12月8日(木)に東大公共政策大学院准教授の松浦正浩さんを国立環境研究所にお招きして公開セミナーをやります! 日時:12月8日(木)13:30-15:30 場所:国立環境研究所 研究本館II 3F 中会議室*1 発表者…

業務連絡:しばらく更新止まります

いろいろエントリーの草稿はたまっているのですが、申請書書き(あと各種の雑多業務)などで首がまったくまわらないのでしばらくweb上から消えます。本当につかれた。がんがります

まとめた保高さん:放射性セシウム汚染土壌の管理・浄化の方法まとめのメモ

産総研の保高徹生さんが、放射性セシウム汚染土壌の管理・浄化の方法についての論考を公開されたのでメモいたします*1。汚染土壌の管理浄化の諸方法についてその利点・欠点・制約条件などをプロの人がまとめたものって意外とないような気がしますので、とて…

なぜ経済協力開発機構がリスク評価に関わるの?

今週は経済協力開発機構(OECD)での会議のためパリに来ていました*1 *2。いま朝の6:00@ホテルなのですが、これから7:00には部屋をでてパリから成田に帰ろうと思っています。今回はまあこういう機会でということで、なぜOECDが化学物質のリスク評価に関わっ…

重回帰の変数選択についての追記:交絡調整との兼ね合い

いまフェスで鹿児島に来ています*1。先日の重回帰の記事の追記として、「相関のある変数を取り除くこと」を「交絡調整」という視点からさくっと語りなおしてみたいと思います。 (これから書くことはたぶん間違ってはないハズとは思うんですが、もし間違って…

重回帰分析における多重共線性への対処ストラテジーのメモ

良い機会なので重回帰分析についてのメモをちょっと残しておきます。今日のネタ本はこちら:Excelで学ぶ共分散構造分析とグラフィカルモデリング作者: 小島隆矢出版社/メーカー: オーム社発売日: 2003/12メディア: 単行本購入: 13人 クリック: 152回この商品…

同情編のための前置き:許容可能リスク・ALARA・予防原則・汚染者負担原則

今回は放射性物質の食品健康影響評価のワーキンググループの評価書シリーズ(過去記事「憤慨編・疑問編」 )の最終回として「同情編」について書こうと思ったのです。が、いざ書こうとすると、いくつかの関連する概念をあらかじめ説明しておかないとエントリ…

重回帰・偏相関・パス解析に関する解説記事のメモ

パトラッシュ、ぼくはもう疲れたよ...と呟きたくなる*1今日この頃ですがみなさまいかがおすごしでしょうか。(ああけっきょく食品安全委員会の件のシリーズをパブコメの〆切前に完結させることはできませんでした...orz) 今回は統計ネタのメモです。さいき…

放射性物質の食品健康影響評価WGの評価書案を読んでみた(その2・疑問編)

このシリーズのその1(憤慨編)にひきつづき、第9回放射性物質の食品健康影響評価に関するワーキンググループ(以下WGと略)による評価書(案)にたいする私の雑感について整理していきたいと思います。今回は「疑問編」になります。(今回もまったくもっ…

村上陽一郎の記事が個人的に衝撃的だった件

食の安全情報blogさんの以下の記事:放射線リスクの真実 〜ジャンクサイエンスに惑わされないために - 食の安全情報blogに触発され今月の中央公論を買って読んでみたのですが、個人的には上記の記事*1よりも、その後の村上陽一郎のインタビュー記事が衝撃的…

不確実性と意思決定:「盛る」のは正義か?

twitter上のTLを見ていたら、不確実性を伴う情報を伝えるときに、それを「安全側」にバイアスをかけて伝えたり(安全側に「盛る」)、「危険側」にバイアスをかけて伝えたりする(危険側に「盛る」)ことの是非が議論されていました。一応わたしも、不確実性…

放射性物質の食品健康影響評価WGの評価書(案)を読んでみた(その1)

ふう。ここのところ書けずに苦しんでいた論文はやっと英文校閲には出せました。「でも本当の苦しみ(査読)はこれからだ!」とか言わないでくださいね後生ですから。これからまたSドク者によるMニュスクリプトへの言葉責めプレイが待ち受けているかと思うと…

リスク評価は意思決定を支える柱の一つにすぎない

まだ論文がぜんぜん書けてない*1のでぜんぜんアレなのですが(参照)、自分の頭の中のモヤモヤを整理するために「リスク評価と意思決定」についてちょっと書いてみたいと思います。今回は学問的に確立した話というよりも、実務寄りのリスク研究者としての経…

これはすごい:生活クラブの真摯なリスコミ

生活クラブのリスクコミュニケーションの文章があまりに真摯なのでメモ。調査・情報公開と運営方針について逃げずに丁寧に説明。この姿勢には頭が下がります。生活クラブ:福島第一原子力発電所事故に関する見解生活クラブ:第22回総会で決定した「原発対応…

なんだこりゃ:アニメで見る統計ディスコミュニケーション

論文は一向に書けていませんが、なんだこりゃなアニメ(英語)を見かけたのでちょっとだけご紹介: ワロタw

業務連絡:しばらく更新止まります

論文書きに集中するためにしばらくブログから離れます*1。自分を縄に縛り付けてでも気合で書くべし>俺*2 *1:twitterも見ていません *2:個人的には、研究のアイデアを考えている時が一番幸せで、論文を書く作業はとてもキライなのです

ふたたび保高さん:放射性物質による土壌汚染の解説のメモ(土が直接口に入るのはどれだけ危険か)

以前もご紹介いたしましたが、保高さんが引き続き一連のエントリーを書き続けていらしているので最新のものをメモしておきたいと思います。放射性物質による土壌汚染4 土壌経由の内部被ばくを計算してみるちょっと引用: 結論から言うと、土壌の直接摂取の寄…

ふたたび岸本さん:放射性セシウムの暫定規制値の根拠に関するメモ

産総研の岸本充生さんの放射性セシウムの基準値の根拠に関する記事を見つけたのでメモしておきます。今回も必読かと思われます。基準値の根拠を追う:放射性セシウムの暫定規制値[2011/05/23]:コラム - 持続可能な社会実現に向けた評価研究部門 | 産総研 AIS…

みなさまにご相談:この生涯当たりリスクの簡易概算法ってOKですかね?

今日はちょっと「生涯当たりリスクの簡易概算法」を思いついたのですが*1、この考え方でOKかどうかの相談も兼ねて書いてみたいと思います。 前置き:比較の際にはリスクの単位に気をつけよう! 異なる事柄のリスクの比較をするときによく間違えやすいのが、…

ミラノに来てみたよ

ミラノなう。SETAC EUというフェスがありミラノに来ています。もう明日には帰るのですが、到着初日の出来事をちょっと書いてみたいと思います。まさにイタリア!というかんじだったので。 旅順としては、成田からイタリアのエスペランサ空港までまず直行便で…

丁寧なのね保高さん:放射性物質による土壌汚染についての解説のメモ

保高徹生さん*1が、放射性物質による土壌汚染についてとても丁寧に解説を書いてくださっているのでメモを。放射性物質による土壌汚染1 放射性物質の土壌面での挙動について図解が多くてわかりやすいです。続編にも期待。 *1:HPがオサレすね

学会ポスターにまつわるTipsのメモ

今日は、エア後輩向けに学会ポスターにまつわるTipsのメモを書きたいと思います。 (1)その筒は本当に必要?:紙で折りたたんで持っていっても実はそんなに気にならない 地方都市でのフェスに参加すると、バス停なんかで多くの人が「筒」を持っている風景がみ…

低頻度高被害型リスクについて考える(2/3):不確実性の問題

前回に引き続き、今回も 「10日に1度の確率で10人が死ぬ事象」と「10万日に1度の確率で10万人が死ぬ事象」は、どちらも「1人死亡/1日」という同一の表現で表すことができるけれども、それは本当に同一なリスクとみなして良いのだろうか? という問いについ…

低頻度高被害型リスクについて考える(1/3):可換性の問題

今回のシリーズではいわゆる「低頻度高被害」タイプのリスクに関して、「可換性」「不確実性」「認知的収支」という3つの視点から書いていきたいと思います。ちょっとマニアック内容になるかもしれませんが、どうかご容赦ください(すんません)。 ベースと…

全編、いま読むとすごく響かざるをえない:『リスク意思決定論』谷口武俊著

以前にも読んだこの本を、自分の新しいエントリーを書くために再読してみました。リスク意思決定論 (シリーズ環境リスクマネジメント)作者: 谷口武俊,「環境リスク管理のための人材養成」プログラム出版社/メーカー: 大阪大学出版会発売日: 2008/10/15メディ…