Take a Risk:林岳彦の研究メモ

自らの研究に関連するエトセトラについてのメモ的ブログです。主にリスク学と統計学を扱っています。

リスク

あの娘吉田豪がロングインタビュー決めたらどんな顔するだろう

すみませんタイトルは内容とちょっとしか関係ありません*1。今回はリスクコミュニケーションやサイエンスコミュニケーションについて最近感じたことをユルく書いてみたいと思いました。 リスクコミュニケーション:「語ること」そして「聴くこと」 いまtwitt…

マジすか岸本さん:放射性ヨウ素の暫定規制値の根拠に関するメモ

産総研の岸本充生さん*1が部門のHPに書いていた記事が軽く衝撃的だったのでメモしておきます。基準値の根拠を追う:放射性ヨウ素の暫定規制値のケース ちょっとだけ引用すると(強調引用者): さらに重要なことは、上の計算からも分かるように、食品の暫定…

意外な展開:自然死産率の生データを見てみた

さいきんtwitter上で、「1960年代において大気圏核実験の影響で自然死産率が上昇している」という情報を見かけました(本記事の論旨の前提となりますので、ぜひ以下URLをご参照の上で以下の記事をお読みください)。http://twitpic.com/4gcyc6研究者ならば生…

「1000年に1度」の意味:頻度と確率を混同しちゃダメ!

今回の大地震を巡って、ときおり頻度と確率が混同されているように思われるので、整理のためのメモをしておきたいと思います。 「1000年に1度」=「今年1年間に大地震が起きる確率が1/1000」? 今回の大地震は869年に起きた貞観地震以来の規模ということで、…

気象学会の予測公開自粛要請に関する記事のメモ

今回の気象学会の予測公開自粛要請に関する素晴らしい記事だと思ったのでメモしておきます。出さないことのリスク : Memories of the Past by Takashi NAGAI「予測を出さないことのリスク」というのも実際にはあるわけですよね。そこも考えないといけません…

野菜の放射性物質のモニタリングに関する記事のメモ

野菜の放射性物質のモニタリングに関して素晴らしい記事だと思ったのでメモしておきます。はてなダイアリー私も同じようなことを漠然と考えていましたが、ここまで明確に文章にはできませんでした(←そして文章にできるかできないかの差は天と地ほど大きいの…

統計的因果推論を学んでみる(0):ヨナ書の引用

これから統計的因果推論について学んでみようと思っております。統計的因果推論について考えることは「偶然と必然」の関係について考えることと重なります。 今回はその序章的メモとして、Judea Pearlの「統計的因果推論」で引用されている、ヨナ書の一節を…

一人でも多くの人命を救うために:リスクトレードオフについて考えよう

今日はリスクトレードオフについて手短に書きたいと思います。 リスクトレードオフって? リスクトレードオフは、一般的には あるリスクを削減することが、また別のリスクを生み出したり、増大させること と定義することができます。 リスクトレードオフの悲…

確率概念の分類を描いてみた

SYNODOSのメルマガ(Vol. 70)の矢野浩一さんの記事に触発されて、今回は私の世界観における確率概念の(認知)分類を描いてみました。 主観確率・頻度主義的確率・ベイズ確率などの語句の説明はWikipediaが参考になるかと思います。客観的確率ですか? みん…

素晴らしく勉強になった:『実践!交渉学 ---いかに合意形成を図るか』松浦正浩著

今回は東大の松浦正浩さんが書かれた『実践!交渉学 ---いかに合意形成を図るか』という新書のメモをしておきます。実践!交渉学 いかに合意形成を図るか (ちくま新書)作者: 松浦正浩出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2010/04/07メディア: 新書購入: 9人 ク…

関谷翔:「リスクガバナンス」の射程

今回は論文のメモです。HERA57さんがtwitterで言及されていた、関谷翔さんという方の修士論文を読みました。「リスクガバナンス」の射程---技術モデル・民主モデルを超えるために---とても頭の整理になったのでオススメの意味も込めてメモしておきます。文章…

無から有(意差)を生む:多重比較でウソをつく方法

前回の記事では多重検定がキーワードとなりましたが、良い機会なので、今回は例を交えながら多重検定がもつ問題のインパクトについて説明したいと思います。 (*「多重検定って何?」という方はこちら)結論を先に書くと、多重性を調整しない多重比較がなぜ…

おっと危ない:信頼区間と予測区間を混同しちゃダメ

今回は仕事で解析をしていて「おっと危ない」と思ったことについて書いてみます。結論からいうと「信頼区間と予測区間を混同しないように注意しましょう!」という話です*1。 課題:BODの値からTOCの値を推定したい 最近ややあってBOD(生物化学的酸素要求量…

日本感染症学会による新型インフルエンザまとめ

日本感染症学会が新型インフルエンザについてのまとめを発表しています。日本感染症学会 - インフルエンザ情報 - 「2010年の総括と2010/2011冬に向けた日本感染症学会の考え方」日本での重症化・死亡例が少ないのは、早期の段階での抗インフルエンザ剤(タ…

ドーパミン vs リスク評価:あるいは石川遼 vs MONOQLO

今回はネタ帳メモ的なボンヤリ系の内容です。お気軽にお読みいただければ幸いです。 錯覚・反省・計算:ピエール=シモン・ラプラスと中西準子 ラプラス(1749-1827)の言葉に以下のようなものがあります*1。 ”視覚に錯覚があるように精神にも錯覚がある。そ…

ちょっとおもてたんとちがう:ミツバチのCCD(蜂群崩壊症候群)のウイルス原因説の論文を読んでみた

研究室での論文紹介セミナーのために、ミツバチのColony Collapse Disorder(CCD; 蜂群崩壊症候群)のウイルス原因説の論文(Bromenshenk et al. 2010 in PLoS One)を読んでみました。元論文のリンクはこちらGizmodoの以下のニュース ミツバチはなぜ大量死する…

フィッシャーの「統計的方法と科学的推論」が面白すぎる(その12)

前回に引き続き、今回もいわゆるフィデューシャル推測の節。今回が本節(第3章3節 推測度による論法)の最後となります。前回の部分の引用の続きで、フィデューシャル推測の確率論としての取り扱いについての議論がされています(強調は引用者): ハロルド…

発表スライド資料提供:ベイズ統計を使った化学物質の定量的生態リスク比較

先日、2010年度 統計関連学会連合大会でお話させていただきました。 その発表スライドをSlideShareにアップしましたので、もし興味のおありの方はご笑覧いただければ幸いです*1。今回は学会の性格上、やや統計学的な内容に重点をおいた内容になっています。A…

Δ5歳のリスク:フェルミ推定的なモノサシとして

われわれは誰もが最後には死にますが、死亡率は年齢により異なります。今回は、5歳年をとることによるリスクの増分(Δ5歳のリスク)を簡単に計算してみます。本計算の目的は、大まかな定量的なイメージを掴むことなので、厳密な計算ではないことを最初にお断…

サイエンスコミュニケーションと予防原則:科学論文の「行間」はどこまで読んで良いのか?

環境リスク業界にいると、化学物質の毒性に関する研究についての「マスメディアにおける紹介記事の内容」とその言及もとである「研究論文において実際に書いてあること」の間のあまりのギャップに驚くことがあります*1。それらのマスメディアの記事はある意…

蜂群崩壊症候群の記事への追記

昨日の記事への追記です。 (1)矢原先生の記事 矢原先生のブログでも、関連記事のアップデート&追記がされました。補足 - Y日記 (2)永井孝志さんの記事 農環研の永井孝志さんの関連記事でミツバチの毒性試験に関しての情報提供がありました。LD50ってミツバ…

蜂群崩壊症候群の原因の記事への補足

矢原先生の以下のブログ記事の補足。論文の解釈がやや短絡的にすぎると思ったので。ミツバチの大量失踪の原因 - Y日記 ミツバチの大量失踪の原因 - アジア保全生態学ブログ 上記の下の方の記事ではMullin et al. (2010)を踏まえて以下のように書かれています…

科学者の社会的発言についての記事のメモ

科学者の社会的発言についての記事のメモをしておきます。内容については御意。良くまとまっておりますね。科学者が社会に発言する立場をしわけてみる - macroscope 科学者は政策決定にどのようにかかわるべきか? - macroscope 以下、末尾のところの引用。 …

エームズ試験で有名なAmes博士の天然農薬の議論などのメモ

発がん性試験のエームズ試験などで有名かつ高名なBrues Ames自身が、自身の研究生活を振り返る記事をメモしておきます。An Enthusiasm for Metabolism 天然農薬(natural pesticide)*1に関する記述はこのあたり(太字は引用者による強調): To put synthet…

変動性と不確実性について説明してみた

変動性と不確実性の説明に関する自作メモです。 変動性と不確実性 推測には不可避的に不確実性が伴います。一般に、その不確実性の内訳は次の二つに分けられます*1。 Total uncertainty = Variability + Uncertainty ここでvariability(変動性)は「システ…

プレゼン資料提供:「なぜベイズ統計はリスク評価に適しているのか?:その哲学上および実用上の理由」

先日以下のセミナーを行いました。セミナー:「なぜベイズ統計はリスク評価に適しているのか?:その哲学上および実用上の理由」 - Take a Risk: 林岳彦の研究メモ そのプレゼン資料を提供いたします(WhyBayes_v2_HayashiTI.pdf ; 10.4MB, 166 pages)。実…

天然化学物質と合成化学物質についてのブログ記事などのメモ

天然化学物質と合成化学物質についてのブログ記事をメモしておきます。パリトキシンの例が印象的。改めて、「天然」と「合成」ということ こちらは「ヤマザキパンはなぜカビないか」論への専門家からの考察(リンク先はpdf)。「ヤマザキパンはなぜカビない…

セミナー:「なぜベイズ統計はリスク評価に適しているのか?:その哲学上および実用上の理由」

6月17日(木)に国立環境研の生物系若手セミナーで以下の内容で発表をします。もしお近くにお住まいで興味のある方がおりましたら御気軽にどうぞ(時間と場所等はこちら)。先日同内容の発表をしたときには、質疑応答込みで丸々3時間かかりましたが、今回は…

第11回内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会議事録

第11回 内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会議事録(平成13年)が面白かったのでメモしておきます。内山先生の以下の発言が特に含蓄あり*1。 そこで、これは余り長く時間かけたくないのですけれども、まずはリスクの問題を議論する中で、コミュ…

農薬の使用を巡る行政側と科学者の対立のニュースのメモ

Natureにカリフォルニア州で行政側と科学者が農薬の使用の許諾について対立しているという記事があったのでメモしておきます。Scientists fume over California's pesticide plansリスクトレードオフなう、という感じの話ですね。California Department of P…

うわオモロそう:Darwin College Lecture 2010 Risk /2009 Darwin

ケンブリッジ大のDarwin College Lectureのビデオがあったのでメモっておきます。 2010年のテーマは"risk"。一番観られているのはWinBUGS関連でおなじみのDavid Spiegelhalterの講演。Darwin College Lecture Series 2010 - Risk 2009年のテーマはずばり”Dar…

Jaworska et al. (2010): 将来的にREACHはBayesian-basedに移行するかも

「リスク評価は実質上「推論の連鎖」から構成されているため、その全ては原理的にはベイジアンネットワークという形に帰着できるのではないか」ということを5月の産総研勉強会での発表で話そうと思っていたのですが、Jaworska/Gabbert/Aldenbergがちょうど同…

EUの銅およびニッケルのリスク評価についての記事のメモ

EUの銅およびニッケルのリスク評価についての記事を石油天然ガス・金属鉱物資源機構のホームページで見つけたのでメモしておきます。JOGMEC金属資源部門「旧海外鉱業情報」バックナンバーのNo.39 Vol 3,4の「Mining & Sustainability 欧州化学物質規制“REACH…

EUのTechnical Guidance Document on RIsk Assessmentにおける種の感受性分布の記述に関する注意喚起

関係各位への注意喚起のためのメモです。 EU(2003)のTGDの105ページの PNEC=5%SSD(50%c.i.)/AF (69) というところの"50%c.i."というのは実質的には「(underestimateだけを興味の対象とする)片側検定的な状況の下での50%信頼区間の下限」を指しているようで…

「古典的統計学の主観性」と「リスク分析における現実としての主観主義」のメモ

「入門リスク分析」からの統計解析における客観性/主観性についての言及(p199)についてメモしておきます。 多くの科学者、特に伝統的な教育を受けてきた多くの統計学者は、科学は客観的であるべきであると考えており、主観主義に依拠するいかなる方法論も…

仮説検定の問題点に関するブログ記事のメモ

仮説検定の問題点を指摘している論文などに言及したブログ記事がはてブで人気だったのでメモしておきます。サヨナラ検定、グッバイ統計的有意性心理学系の学会では、投稿規定の段階で既に「統計解析では仮説検定の結果だけではなく効果の大きさと信頼区間も…

確率的発想法/小島寛之

この本はとんでもなく面白かったです。こんなに刺激的な本はなかなかないと思います。最近私が読んだ本の中では間違いなくベストのうちに入ると思いました。惜しむらくは書名の印象と実際の内容に乖離があることです。この書名のせいで「この本の面白さが本…

リスク意思決定論/谷口武俊

大阪大学の「環境リスク管理のための人材育成」プログラム編による「環境リスクマネジメントシリーズ」の一巻となる「リスク意思決定論」を読みました。全体的に「リスクと意思決定」に関する話題がコンパクトにまとまっている感じで、手っ取り早く全体像を…

ほんとうの「食の安全を考える」/畝山智香子

食品安全情報blogで有名な畝山智香子さんの食品中化学物質のリスク評価の入門書を読みました。私も分野は違えどリスク評価に関わる研究者として一通りの内容は知っているつもりでしたが、リスク評価に特有な様々な概念(ADIとかARfDとかNOAELとか…)について…