Take a Risk:林岳彦の研究メモ

自らの研究に関連するエトセトラについてのメモ的ブログです。主にリスク学と統計学を扱っています。

統計

セミナー:「なぜベイズ統計はリスク評価に適しているのか?:その哲学上および実用上の理由」

6月17日(木)に国立環境研の生物系若手セミナーで以下の内容で発表をします。もしお近くにお住まいで興味のある方がおりましたら御気軽にどうぞ(時間と場所等はこちら)。先日同内容の発表をしたときには、質疑応答込みで丸々3時間かかりましたが、今回は…

重いベイズの話(その1):我々はどこまで複雑なモデルを作れば気が済むのだろうか?

先週末は日本計量生物学会年会の特別セッション「農学、生態学、進化学でのベイズ統計手法の応用に関する諸問題」に参加してきました。個人的にはとても勉強になる内容で、刺激を受けてその後色々なことが頭をよぎりましたので、その辺りについてメモしてお…

MCMCの収束診断におけるRhatの具体的な値についての引用メモ

Gelman et al. (2004)に「収束判断の際のRhatの具体的な値」に関する記述(p297)があるのでメモしておきます。こういうのってメモしておかないといざ論文に引用しようというときに見つからないということがままありますので。 The condition of being 'near…

うわオモロそう:Darwin College Lecture 2010 Risk /2009 Darwin

ケンブリッジ大のDarwin College Lectureのビデオがあったのでメモっておきます。 2010年のテーマは"risk"。一番観られているのはWinBUGS関連でおなじみのDavid Spiegelhalterの講演。Darwin College Lecture Series 2010 - Risk 2009年のテーマはずばり”Dar…

AICとDICに関する非常にアヤしい自作メモ(その5)

とりあえず今回のメモで最後になります。今回の内容についての判断は明らかに自分の能力の範囲を超えるため、単なる論文内の記述のメモのような感じになりました。相変わらず正しくはないかもしれないので注意してください。 Efron (1986)の意思決定理論の枠…

AICとDICに関する非常にアヤしい自作メモ(その4への追記)

*追記2010/04/27:すみません以下の記事ちょっと文脈的なところで適切でない部分がありました。詳しくはメモその5でフォローします。* 今回は前回の追記的な短いメモになります。 改めてDICの元論文であるSpigelhalter et al. (2002)*1を読んでいたら、DI…

AICとDICに関する非常にアヤしい自作メモ(その4)

最初に書いておきますが今回のメモについても非常に間違っている可能性がありますので注意してください。特に、今回書く内容については既にメモ(その3)へのコメントとして伊庭先生に非常に貴重な解説をいただいておりますので、是非そちらの方をメインで…

AICとDICに関する非常にアヤしい自作メモ(その3)

あらかじめ書いておきますが、ここに書いてあることは間違ってる可能性が高いので気をつけてください。でも以前のメモも素晴らしく貴重なコメントの数々をいただきました(大感謝)ので、きっとコメント込みで読んでいただければ何らかのお役に立てるような…

AICとDICに関する非常にアヤしい自作メモ(その2)

あらかじめ断っておきますが、これらの一連のメモは正しいか間違っているかで言ったらおそらく間違っています。ただしいちどあえて間違った考え方の中に分け入ってみることで正しい考えに至る道を見つけることもあるので、メモを残しておきます。そういう類…

AICとDICに関する非常にアヤしい自作メモ(その1)

最初に書いておきますがここに書いてあることの数学的な正しさについては全く保証できませんのであしからず*1。このエントリーは自分用のトライアルメモです。 AICの直感的な説明を目指したメモ(たぶんアヤしい) AICは基本的に AIC = -2Ln L + 2K と書けま…

ベイズとモデル選択:DICに関する記事のメモ

好むと好まざるとに関わらず、われわれにはベイズでモデル選択をしなければならないときがあります。しかしながらベイズでのモデル選択ではけっきょく何を使えばOKなのか分からず、実務上本当に困ってしまうことも少なくありません。このあたりはいつか結論…

Web上の無料統計計算ソフトウェアのメモ

ちょっとRのコードの探しものをしていたら以下のようなサイトを見つけましたのでメモしておきます。Free Statistics and Forecasting Softwareデータをウインドウにコピペするといろいろな統計的計算をしてくれるようです。基本的にはRで書かれているみたい…

EUのTechnical Guidance Document on RIsk Assessmentにおける種の感受性分布の記述に関する注意喚起

関係各位への注意喚起のためのメモです。 EU(2003)のTGDの105ページの PNEC=5%SSD(50%c.i.)/AF (69) というところの"50%c.i."というのは実質的には「(underestimateだけを興味の対象とする)片側検定的な状況の下での50%信頼区間の下限」を指しているようで…

「古典的統計学の主観性」と「リスク分析における現実としての主観主義」のメモ

「入門リスク分析」からの統計解析における客観性/主観性についての言及(p199)についてメモしておきます。 多くの科学者、特に伝統的な教育を受けてきた多くの統計学者は、科学は客観的であるべきであると考えており、主観主義に依拠するいかなる方法論も…

二項分布のベイズ推定における事前分布のメモ

粕谷さんのページに、二項分布のベイズ推定では「事前分布が一様分布なのに尤度分布と事後分布がずれる」ことについての記事がありました。それに関連した内容の記述が「入門リスク分析」(228p)にあったのでメモしておきます。 ベータ分布Beta(1,1)は一様…

仮説検定が強調されすぎるようになった歴史的経緯についてのメモ

粕谷さんのページに仮説検定が強調されすぎるようになった歴史的経緯についての記事があったのでメモしておきます。[統計]”ゆーい差決戦主義”とFisherかなりの昔から今と変わらない議論がされているんですね。勉強になります。けっきょくのところFisherの…

フィデューシャル推測に対する言及のメモ

渡辺洋著「ベイズ統計学入門」において、フィデューシャル推測に対して言及されている部分(p78)についてメモしておきます。 しかし図4-3では、R.A.フィッシャーによるいわゆるフィデューシャル推測(信頼確率による推測ともいわれる)の立場を、事前分布を…

仮説検定の問題点に関するブログ記事のメモ

仮説検定の問題点を指摘している論文などに言及したブログ記事がはてブで人気だったのでメモしておきます。サヨナラ検定、グッバイ統計的有意性心理学系の学会では、投稿規定の段階で既に「統計解析では仮説検定の結果だけではなく効果の大きさと信頼区間も…

実践としての統計学/佐伯胖、松原望

いわゆるcook-book的な統計の本とは対極的な、統計学の背景に存在する考え方(How toではなくWhatとWhy)について書かれた本でした。こういう本はあまり類書がないので勉強になりました。触れられている内容は ネイマンとフィッシャーの立場の違い 主成分分…

ネイマン自身の信頼区間の解釈とフィッシャーの立ち位置のメモ

ネイマン自身の信頼区間の解釈とフィッシャーの立場について、Ian Hackingの「An introduction to probability and inductive logic」から引用のメモをしておきます。 ネイマン自身の信頼区間の解釈について(p242): Neyman said that when we use the metho…

Bayesianとは何か:2つの"Bayesian"

「Bayesianとは何か」についての話が混乱しがちなのは、「"Bayesian"という言葉が2つの微妙に異なることを意味しうる」ことにその一因にあると思われます。「統計学を拓いた異才たち」にもその辺りの混乱について ベイズの異説を説明するのが難しいのは、数…

確率的発想法/小島寛之

この本はとんでもなく面白かったです。こんなに刺激的な本はなかなかないと思います。最近私が読んだ本の中では間違いなくベストのうちに入ると思いました。惜しむらくは書名の印象と実際の内容に乖離があることです。この書名のせいで「この本の面白さが本…

An Introduction to probability and inductive logic/ Ian Hacking

「そもそも確率って何?」という問題意識があり読んでみました。結論から言うととても面白かったです。勉強にもなりましたし、読み物としても面白いです。ギリースの「確率の哲学理論」よりもこちらの方がオススメですね*1 *2。で、けっきょく確率解釈の大ま…