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Take a Risk:林岳彦の研究メモ

自らの研究に関連するエトセトラについてのメモ的ブログです。主にリスク学と統計学を扱っています。

フィッシャーの「統計的方法と科学的推論」の訳者解説が素晴らしすぎる(その8)

前回からの続きです。今回は不偏性に関する議論です。不偏性の簡単な説明については以下も参考になるかと思います。不偏性 前回からの引用の続きです(強調引用者): 推定においてフィッシャーが不偏性の規準を攻撃することも当を得ている。各人が推定する…

フィッシャーの「統計的方法と科学的推論」の訳者解説が素晴らしすぎる(その7)

前回からの続きです*1。便宜上、段落の途中で引用を区切りますがご容赦ください。 ネイマンの考え方にたいするフィッシャーの批判ないし反発は、確かに的を射ている面も多いし、また論理一貫性を追って無理な批判となっている点も見られる。 近似的には同一…

フィッシャーの「統計的方法と科学的推論」の訳者解説が素晴らしすぎる(その6)

前回から続きます(強調は引用者): もう一つの、そうして最もやかましい議論を生じた問題は、区間推定に関してである。 いま上にあげたのと同じ問題について考えると、 となるから、これを変形して と表される。したがってとで限られた区間に母数が含まれ…

フィッシャーの「統計的方法と科学的推論」の訳者解説が素晴らしすぎる(その5)

前回からの続きです: 改めてフィッシャー対ネイマンの論争にもどって、具体的に争点となった問題を説明しよう。 最初に問題となったのは仮説検定論である。フィッシャーは、カール・ピアソンと同じく、仮説検定の問題を、得られた標本が仮定された分布をも…

フィッシャーの「統計的方法と科学的推論」の訳者解説が素晴らしすぎる(その4)

前回の続き(強調引用者): このような立場は、それぞれ現在の統計学におけるいくつかの考え方のあるものを代表しているのである。確率を頻度として考える立場の代表者はフォン・ミーゼスである。彼は確率を集団現象における相対頻度の意味に限定し、さらに…

フィッシャーの「統計的方法と科学的推論」の訳者解説が素晴らしすぎる(その3)

前回から続きます: 統計的推測における”確からしさ”あるいは”確率”の問題を考えるために、三つの段階を区別しなければならない。たとえばものの長さを測る場合をとると、 1.測定の方式(測定の回数等)と観測値からの推定方式を定める。測定方式はいろいろ…

フィッシャーの「統計的方法と科学的推論」の訳者解説が素晴らしすぎる(その2)

前回から続きます。続き(強調は引用者): ところでこのように見てくると、ここで”確からしさ”あるいは”確率”というものについての、いろいろな考え方がからみあっていることがわかるであろう。ネイマンは”確率”をもっぱら客観的に観測可能な繰り返し試行に…

フィッシャーの「統計的方法と科学的推論」の訳者解説が素晴らしすぎる(その1)

本編の方はフィデューシャル推測の項まで書いたのでもう良いかなあ、と思って終わりにして、今回から同書の「素晴らしすぎる訳者解説」のメモを書いていきます。訳者の方は「渋谷政昭・竹内啓」さんなのですが、巻末の訳者解説が本当に素晴らしく完成度が高…

フィッシャーの「統計的方法と科学的推論」が面白すぎる(その12)

前回に引き続き、今回もいわゆるフィデューシャル推測の節。今回が本節(第3章3節 推測度による論法)の最後となります。前回の部分の引用の続きで、フィデューシャル推測の確率論としての取り扱いについての議論がされています(強調は引用者): ハロルド…

フィッシャーの「統計的方法と科学的推論」が面白すぎる(その11)

前回に引き続き、今回もいわゆるフィデューシャル推測の節。前回の部分の引用の続きで、導出したの頻度分布の解釈についての議論になっていきます: 実験者が事前の知識なしに、実験の結果得られたTのある値にもとづいて追求している、の特定の未知の値にた…

フィッシャーの「統計的方法と科学的推論」が面白すぎる(その10)

今回もいわゆるフィデューシャル推測の節。前回の続きから引用: この推理様式の一例として、粒子を未知の頻度で互に完全に独立な時点で放射している放射能源を考えよう。あい続く二つの放射の間隔はランダムで指数分布 にしたがって分布しているだろう。こ…

フィッシャーの「統計的方法と科学的推論」が面白すぎる(その9)

今回から、第3章「いろいろな形の定量的推論」の第3節「推測度による論法」を見ていきます。いわゆる「フィデューシャル推測」ってやつですね。この節は詳しく見ていきたいと思います。冒頭から引用していきます(強調は引用者): 推測度という言葉は、あ…

フィッシャーの「統計的方法と科学的推論」が面白すぎる(その8)

いささか間が空いてしまいましたが、本書のメモも再開します。第3章「いろいろな形の定量的推論」の第2節「より一般的な仮説」より。強調は引用者。 科学的仮説では、一つあるいは二つ以上のパラメータ、つまり調整可能な"定数"が含まれており、それがどの…

進化学者のためのMCMCのアナロジカルなアヤシイ解説/その3

今回は本解説シリーズ(第1回・第2回)の最終回として、「無性生物の進化シミュレーションとしてのMCMC(マルコフ連鎖モンテカルロ法)」について解説していきます。今回は長いっす。 無性生物集団の進化は「マルコフ連鎖」&「モンテカルロ」 まずは「マ…

タコのパウル師匠追悼:幾つかの記事のメモ

ワールドカップで予測を次々に的中させたタコのパウル師匠がお亡くなりになりました。追悼の意味を込めいくつか記事のメモ:Wikipediaのパウル師匠のページ(詳細すぎ)↓ Paul the Octopus - Wikipedia, the free encyclopedia D. Spigelhalter*1のパウル師…

対数周辺尤度と自由エネルギーの関係についての記事のメモ

今回も純粋にメモ。対数周辺尤度と自由エネルギーに関係についての記事。アルゴリズムマニア2.0いくつか部分的に引用すると このように汎化誤差は対数周辺尤度の増分で書くことができます。この意味でも周辺尤度が重要だったりします。 ちゃんとした用語の定…

A. Gelmanのブログ記事のメモ:赤池弘次とマンデルブロ

A.Gelmanのブログにマンデルブロと赤池弘次の仕事の関連についての記事があったのでメモしておきます。純粋にメモ。Mandelbrot and Akaike: from taxonomy to smooth runways (pioneering work in fractals and self-similarity) « Statistical Modeling, Ca…

ベイズ統計は主観的か?:A. Gelmanの記事のメモ

A.Gelmanの主観確率(subjective probability)に関するコメントを含む記事があったのでメモしておきます*1。Does posterior predictive model checking fit with the operational subjective approach? « Statistical Modeling, Causal Inference, and Soci…

進化学者のためのMCMCのアナロジカルなアヤシイ解説/その2

前回の記事では、「事後分布を求めること」と「一世代後の遺伝子頻度分布を求めること」がパラレルに解釈できることについて書きました。 今回は、そもそもなぜMCMCが必要なのかについて、解説していきます。 「尤度関数を描く」=「適応度地形を描く」 アナ…

進化学者のためのMCMCのアナロジカルなアヤシイ解説/その1

今回は進化学者のためのマルコフ連鎖モンテカルロ方(MCMC)のアナロジカルな解説を書いてみたいと思います。いつもながら内容はアヤシイですが「B級グルメ的な解説」として捉えていただくとよい案配かと思います。今回の一連の記事のポイントを先に書くと…

ベイズ予測情報量基準(BPIC)の分からないところのメモ

「ベイズ統計モデリング/安道知寛著」にラスボス的に出てくるベイズ予測情報量基準(BPIC)なのですが、分からないところがあるので個人用にメモしておきます*1。142pの7.3式: は単純な形でのBPICを示しています。ここで第1項は事後対数尤度(devianceの…

サンプリングとAICの同時代的インパクトに関する証言のメモ

統計数理 Vol. 58, No1をつらつら読んでいてちょっと面白かったので引用メモ(坂元2010, p65の部分;強調は引用者による)。 ...この時期*1は、AICが導入されてまだ数年しか経っておらず、AICを認める人は少数であったが、創業者利得(のおこぼれ)とでも言…

フィッシャーの「統計的方法と科学的推論」が面白すぎる(その7)

ちょっと戻って、第2章「初期の試みとその難点」の第4節「確率の意味」からの引用メモ(p35)。強調は本文ママ。 古典的な確率の概念を、個々の場合に適用できるための基本的な要請は、典型的な確率命題における主観的な無知と、客観的な知識との役割をはっ…

発表スライド資料提供:ベイズ統計を使った化学物質の定量的生態リスク比較

先日、2010年度 統計関連学会連合大会でお話させていただきました。 その発表スライドをSlideShareにアップしましたので、もし興味のおありの方はご笑覧いただければ幸いです*1。今回は学会の性格上、やや統計学的な内容に重点をおいた内容になっています。A…

フィッシャーの「統計的方法と科学的推論」が面白すぎる(その6)

引用メモその6。有意性検定に対する言及。 第3章「いろいろな形の定量的推論」の第1節「単純な有意性検定」より。強調は引用者。 科学研究における有意性検定の有効性を説明するために、検定にもとづくいろいろな命題が正しかったり誤ったりする頻度を引…

フィッシャーの「統計的方法と科学的推論」が面白すぎる(その5)

引用メモその5。第2章「初期の試みとその難点」の「4.確率の意味」から。フィッシャーの確率概念の捉え方が垣間見える。(特に断りのない限り強調は引用者) 確率の数学的定義に関する言及: しかし数学的な定義は、単にその言葉が演繹的な数学的推論の中…

フィッシャーの「統計的方法と科学的推論」が面白すぎる(その4)

引用メモその4。第2章「初期の試みとその難点」の「2. ジョージ・プール」から。ベイズ法と逆確率に関するフィッシャーの立ち位置が垣間見れる。 (引用者注:ネズミの同型接合体と異型接合体の確率計算の話の流れから) また、実験家が、そのネズミの両…

フィッシャーの「統計的方法と科学的推論」が面白すぎる(その3)

引用メモその3。第2章「初期の試みとその難点」の第1節「トーマス・ベイズ」の最後の部分(p17; 強調引用者)。フィッシャーの先験確率(事前確率)に対する立ち位置がよく分かる。 このように、ベイズの導入した先験確率を表す式は、恣意的な要素を含ん…

フィッシャーの「統計的方法と科学的推論」が面白すぎる(その2)

また引用メモ。「はしがき」の直後の「第2章 初期の試みとその難点」の、第1節「1. トーマス・ベイズ*1」の冒頭を引用(強調は引用者)。 科学的推論の過程、すなわち実験研究者が理解している意味での現実の世界を理解する方法に、合理的な説明を与えよう…

フィッシャーの「統計的方法と科学的推論」が面白すぎる(その1)

最近、ひょんなことからフィッシャーの「統計的方法と科学的推論」(渋谷政昭・竹内啓訳、岩波書店)を譲り受けました。原本が1956年初版、翻訳本が1962年初版になっております。1962年はフィッシャーの没年*1ですので、フィッシャー晩年の著作ですね。この…

不偏分散のn-1についての記事のメモ

不偏分散において「なぜnではなくn-1で割るのか」というのは色々な説明のしかたがあるかと思いますが、個人的にはタコでもわかる主成分分析さんの以下のグラフィカルな説明が一番分かりやすかったような気がします。 (おまけ) イラストでわかる自由度と不…

モデル選択・DICに関係ありそうな科研費研究のメモ

柳本武美先生という方の科研費研究でDICに対する言及があったのでメモしておきます。KAKEN - ベイズ法の発展的適用による回帰分析の展開(20500259) 特に該当する部分は以下*1。私のレベルでは全く理解できませんが、一応メモ。 ...加えて、KL分離度と尤度比…

頭足類の高い予測能力が科学的に証明された

ibaibabaibai日記のネタ引用。簡にして要。 ドイツの蛸のパウルはW杯5勝7敗を完全予測.P=0.0078 「統計的有意差」があったということと「科学的に証明された」ということの間には本来かなーりのギャップがあります。 統計リテラシーのある人には常識でも、…

変動性と不確実性について説明してみた

変動性と不確実性の説明に関する自作メモです。 変動性と不確実性 推測には不可避的に不確実性が伴います。一般に、その不確実性の内訳は次の二つに分けられます*1。 Total uncertainty = Variability + Uncertainty ここでvariability(変動性)は「システ…

プレゼン資料提供:「なぜベイズ統計はリスク評価に適しているのか?:その哲学上および実用上の理由」

先日以下のセミナーを行いました。セミナー:「なぜベイズ統計はリスク評価に適しているのか?:その哲学上および実用上の理由」 - Take a Risk: 林岳彦の研究メモ そのプレゼン資料を提供いたします(WhyBayes_v2_HayashiTI.pdf ; 10.4MB, 166 pages)。実…

ベイジアンネットワークに関する引用メモ

「データマイニング入門/豊田秀樹」からベイジアンネットワークに関する記述を幾つかメモしておきます*1。 ベイジアンネットワークの目的について(P210): ベイジアンネットワークの目的の1つは、事象間の影響関係をグラフィカルなモデルとしてわかりや…

ベイズとクロスバリデーションに関する引用メモ

にしなさんにコメント欄で紹介していただいたGelmanの以下のブログ記事が参考になりそうだったので、ここでもメモしておきます。Cross-validation for Bayesian multilevel modeling いろいろと参考になりそうなテクニカルなことも書いてあるのですが、とり…

データマイニングと交差妥当化に関する引用メモ

「データマイニング入門/ 豊田秀樹著」を読んでいて、「そういうかんじなのかあ」と感じたところがあったので引用メモ(p16)。 データマイニングにおけるデータ解析の最大の特徴は、交差妥当化を標準で実施する文化を定着させたことである。ただし交差妥当…

「統計的推測」の目的による分類のポンチ絵を描いてみた

だいたいこんな感じでしょうか。 モデル(=仮説)が全然分からない場合→「モデルの発見」のフェーズ 有力なモデル(=仮説)が複数ある場合→「モデルの選択」のフェーズ ベストなモデル(=仮説)が決まっている場合→「パラメータ値の推測」のフェーズ 外側…

セミナー:「なぜベイズ統計はリスク評価に適しているのか?:その哲学上および実用上の理由」

6月17日(木)に国立環境研の生物系若手セミナーで以下の内容で発表をします。もしお近くにお住まいで興味のある方がおりましたら御気軽にどうぞ(時間と場所等はこちら)。先日同内容の発表をしたときには、質疑応答込みで丸々3時間かかりましたが、今回は…

重いベイズの話(その1):我々はどこまで複雑なモデルを作れば気が済むのだろうか?

先週末は日本計量生物学会年会の特別セッション「農学、生態学、進化学でのベイズ統計手法の応用に関する諸問題」に参加してきました。個人的にはとても勉強になる内容で、刺激を受けてその後色々なことが頭をよぎりましたので、その辺りについてメモしてお…

MCMCの収束診断におけるRhatの具体的な値についての引用メモ

Gelman et al. (2004)に「収束判断の際のRhatの具体的な値」に関する記述(p297)があるのでメモしておきます。こういうのってメモしておかないといざ論文に引用しようというときに見つからないということがままありますので。 The condition of being 'near…

うわオモロそう:Darwin College Lecture 2010 Risk /2009 Darwin

ケンブリッジ大のDarwin College Lectureのビデオがあったのでメモっておきます。 2010年のテーマは"risk"。一番観られているのはWinBUGS関連でおなじみのDavid Spiegelhalterの講演。Darwin College Lecture Series 2010 - Risk 2009年のテーマはずばり”Dar…

AICとDICに関する非常にアヤしい自作メモ(その5)

とりあえず今回のメモで最後になります。今回の内容についての判断は明らかに自分の能力の範囲を超えるため、単なる論文内の記述のメモのような感じになりました。相変わらず正しくはないかもしれないので注意してください。 Efron (1986)の意思決定理論の枠…

AICとDICに関する非常にアヤしい自作メモ(その4への追記)

*追記2010/04/27:すみません以下の記事ちょっと文脈的なところで適切でない部分がありました。詳しくはメモその5でフォローします。* 今回は前回の追記的な短いメモになります。 改めてDICの元論文であるSpigelhalter et al. (2002)*1を読んでいたら、DI…

AICとDICに関する非常にアヤしい自作メモ(その4)

最初に書いておきますが今回のメモについても非常に間違っている可能性がありますので注意してください。特に、今回書く内容については既にメモ(その3)へのコメントとして伊庭先生に非常に貴重な解説をいただいておりますので、是非そちらの方をメインで…

AICとDICに関する非常にアヤしい自作メモ(その3)

あらかじめ書いておきますが、ここに書いてあることは間違ってる可能性が高いので気をつけてください。でも以前のメモも素晴らしく貴重なコメントの数々をいただきました(大感謝)ので、きっとコメント込みで読んでいただければ何らかのお役に立てるような…

AICとDICに関する非常にアヤしい自作メモ(その2)

あらかじめ断っておきますが、これらの一連のメモは正しいか間違っているかで言ったらおそらく間違っています。ただしいちどあえて間違った考え方の中に分け入ってみることで正しい考えに至る道を見つけることもあるので、メモを残しておきます。そういう類…

AICとDICに関する非常にアヤしい自作メモ(その1)

最初に書いておきますがここに書いてあることの数学的な正しさについては全く保証できませんのであしからず*1。このエントリーは自分用のトライアルメモです。 AICの直感的な説明を目指したメモ(たぶんアヤしい) AICは基本的に AIC = -2Ln L + 2K と書けま…

ベイズとモデル選択:DICに関する記事のメモ

好むと好まざるとに関わらず、われわれにはベイズでモデル選択をしなければならないときがあります。しかしながらベイズでのモデル選択ではけっきょく何を使えばOKなのか分からず、実務上本当に困ってしまうことも少なくありません。このあたりはいつか結論…